写真提供:©Mike Fox/ZUMAPRESS.com/共同通信イメージズ

 2025年9月に発売された「iPhone17」の販売が好調だ。だが、アップルの革命的製品は、実は「後追い」から始まっている──。既存市場に挑み、徹底したデザイン品質と“必要なら迷わず変える”という「君子豹変」の哲学で、スティーブ・ジョブズは古い常識を壊し、新たな価値を生み出した。『ビジネスモデル全史[完全版]』(三谷宏治著/日経BP 日本経済新聞出版)から一部を抜粋・再編集し、iPod、iPhone、iPad誕生の裏側から、圧勝の理由を読み解く。

ジョブズの逆張り戦略
「垂直再統合」と「逆替え刃」で天下を取る

ビジネスモデル全史〔完全版〕』(日経BP 日本経済新聞出版)

■ ジョブズの「新製品」はすべて「後追い」だった

スティーブ・ジョブズ
リード大学を入学後6ヶ月で退学したが、空き瓶拾いで食いつなぎ、好きな授業だけ聴講し1年を過ごした。導師を求めてインドに渡るが赤痢で苦しみ帰国。しかし終生、禅に打ち込み、製品にも生活にもシンプルさを求めた。愛用のタートルはイッセイミヤケのもの。黒と濃緑を100枚ずつ発注した。

 2011年10月5日、巨星墜(お)つ。文字通り一代で世界最大級のビジネスを創造したスティーブ・ジョブズが、現役会長のままこの世を去りました。その最期(さいご)は、長年患(わずら)った膵臓(すいぞう)ガンから来る心停止。自宅での眠るような死であったといいます。

 その日、彼がつくり、追われ、戻り、再興して、爆発的成長へと導いたアップルの時価総額は3500億ドル。創業者で現役会長の突然の訃報(ふほう)にもかかわらず、株価は378ドルと前日からほとんど動きませんでした。

 このアップルの巨大な売上と利益は、いくつかの製品ラインからなります。そのほとんどは、ジョブズのもとで21世紀中に生まれました。14年4~7月期で見ると、売上高374億ドルの内訳は、次頁の図の通りです。