千葉市にある誉田CFC。稼働率は50%に達していないが、1年間でスーパーマーケット10店分の商品を供給するまでになった。生産性も立ち上げ当初と比べ、倍に向上している

 イオンがネットスーパー「グリーンビーンズ」の展開を本格化させている。物流にAI(人工知能)やロボットを活用し、鮮度維持などこれまでのネットスーパーが抱えていた課題解決に取り組む。イオンが描く次世代型ネットスーパーの姿とは。グリーンビーンズの仕組みと成果をレポートする。

1時間単位の時間指定で利用者の利便性を向上

 コロナ下に大きく伸長し、スーパーマーケット業界が大きな期待を寄せるネットスーパー事業。

 従来は店舗の商品を商圏内のお客に届ける「店舗出荷型」がほとんどだったが、今では大型の物流センターで商品のピッキングや梱包を一括して行い、広域のお客に届ける「センター出荷型」も登場している。

 大手小売企業ではイトーヨーカ堂が店舗出荷型からセンター出荷型へと戦略を転換。2023年8月にネットスーパー用の新横浜センター(神奈川県横浜市)を稼働させ、同年9月に新会社、イトーヨーカドーネットスーパー(本社:東京都、河田康彦社長)を設立。2024年8月以降に流山センター(千葉県流山市)も稼働させる計画を持つ。

 今回取り上げるグリーンビーンズもセンター出荷型のネットスーパー。ネットスーパー専業大手の英国オカドグループと提携し、イオンの子会社、イオンネクスト(本社:千葉県、バラット・ルパーニ社長)が運営、2023年7月にサービスを開始したものだ。

 現在は東京北部を除く13区、千葉市など千葉県の5市、神奈川県は川崎市で利用可能で、会員数は開業後1年で21万人を突破し、2年目は倍増を目指している。

 利用者は、6割が東京都(の居住者)、3割が千葉県、1割が神奈川県。共働き世帯の30代、40代と子育てが落ち着いた50代の利用が多い。

 ネットスーパーで課題になるのは「忙しいお客にいかに便利に使ってもらうか」ということ。そこで、グリーンビーンズでは朝7時から夜23時まで1時間単位で配送時間帯を指定できるようにすることで利便性を高めた。

 現在、お客の不在率は1%未満だが、朝6時からの配送も一部の地域で試験的に開始。グリーンビーンズのアプリで、前の配送先を出発すると「これから配送にまいります」、自宅前にトラックが到着すると「到着しました」という内容を送る取り組みも始め、さらなる利便性の向上に取り組んでいる。

 グリーンビーンズの配送を担うのはイオンネクスト子会社のイオンネクストデリバリー(本社:千葉県)。お客の住所を郵便番号別に管理しており、AIが1秒間に1400万通りの配送ルートを計算することで配送効率を向上。それを即時に配送時間帯枠に反映させることで注文件数を増やしている。