
民間企業によるロケット開発、人工衛星を利用した通信サービス、宇宙旅行など、大企業からベンチャー企業まで、世界のさまざまな企業が競争を繰り広げる宇宙産業。2040年には世界の市場規模が1兆ドルを超えるという予測もあり、成長期待がますます高まっている。本連載では、宇宙関連の著書が多数ある著述家、編集者の鈴木喜生氏が、今注目すべき世界の宇宙ビジネスの動向をタイムリーに解説。
今回は、日本でもいよいよ開始される通信衛星とスマートフォンが直接つながる通信サービス「ダイレクトトゥセル」(Direct to Cell)の最新動向をレポート。
2025年春、KDDIがサービス開始
通信衛星とスマートフォンが直接つながる通信サービス「ダイレクトトゥセル」(Direct to Cell、以下DTC)が、日本国内でもいよいよ開始される。地上の基地局を必要とせず、一般的なスマートフォンがそのまま使用でき、空が見える場所であればどこでも高速回線につながるDTCサービスは、携帯キャリア(通信事業者)のシェアを大きく変える可能性がある。
KDDIは2024年12月、DTCサービスを2025年春ごろから開始すると発表した。同社はイーロン・マスク氏率いるスペースX(本社テキサス州)と提携し、「スターリンク」衛星を使用する。
当初は2024年中のサービス開始を目指していたが、スマホの対応機種が限定されていたことや、通信テストに時間を要したため、その開始は遅れていた。KDDIの場合、現状では日本国土の約60%で4G LTE回線を使用できるが、このDTCサービスの開始により、地上基地局がない山間部や島しょ部を含む国内全域で、スマホによる通信が可能になる。