総合電子部品メーカーのTDKは海外企業の買収を繰り返しながら成長してきた。グループ全体の海外売上高比率は91.2%(2024年3月期決算)、海外従業員数は約9万人(日本を含めた従業員数は約10万人)に上る。名実ともに「グローバル企業」になった同社は、人事戦略も全世界で一本化した。TDKは、どのような人事制度を構築したのか。2017年に人財本部長に就任し、改革の旗振り役を務めてきたアンドレアス・ケラー氏に聞いた。
バラバラだった人事制度を統一した理由
──TDKは日本以外の地域で約9万人の雇用を抱え、売上の9割以上が海外という「グローバル企業」です。ケラーさんは2017年に人財本部長に就任しましたが、人事制度をどのように改革したのですか。
アンドレアス・ケラー氏(以下敬称略) まず、背景として海外企業の買収を繰り返しながら成長してきたTDKにとって全世界共通の人事戦略を策定し、世界中に散らばる優秀な人財を必要なポジションに登用する仕組みが必要でした。
私が入社した2000年においては、海外子会社は現在より少なく、従業員数も全世界で3万5千人程度でした。それが今や、世界で250の拠点を持ち、海外で働く従業員は約9万人になっています。
私が人財本部長に就任する2017年までは、人事制度は各国の各拠点でバラバラになっていることが多く、TDKグループ全体として統一したものはありませんでした。日本の本社では日本の人事制度、欧州の子会社では買収以前の人事制度、というような形になっていたのです。そのため、組織としてのまとまりに欠ける部分が目立ち、国を跨いだ異動もほとんどありませんでした。
ただ、TDKは急速に海外の拠点を増やしていましたし、今後もグローバル企業を目指していくという方向性を明確にしていました。グループ全体として持続的な成長を見込む上では、優秀な人財を然るべきポジションに登用する仕組みと、世界に散らばる各子会社の生産性を高めるためのグローバル人事戦略の構築が不可欠だと考えたのです。
──グローバルで一本化した人事戦略は、どのようなものですか。