ルネサス エレクトロニクス CHRO ジュリー・ポープ氏(撮影:川口紘)

 日立製作所と三菱電機、NECの半導体部門を源流とする半導体メーカーのルネサス エレクトロニクス(以下ルネサス)は近年、海外企業のM&Aを重ねている。事業の多角化、グローバル化に伴い、人事制度の改革にも着手。2021年に買収先である英国のDialog Semiconductorから入社し、2022年9月にルネサス初のCHRO(最高人事責任者)に就任したジュリー・ポープ氏に、ルネサスが目指す人事制度の在り方について話を聞いた。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年8月29日)※内容は掲載当時のもの

給与と福利厚生を一本化

──ポープさんはこれまで米国のIBMやAmerican Express、英国のDialog Semiconductorといったグローバル企業で人事職を務めてきた経験があります。なぜ、ルネサスへの入社を決めたのでしょうか。

ジュリー・ポープ氏(以下敬称略) 私はルネサスに買収されたDialog Semiconductorのシニアバイスプレジデントを務めていましたが、買収された当初は入社を迷っていました。というのも一般論で言えば、企業が買収された後も買収以前の役割を継続できるケースは少ないからです。

 それに、ルネサスは日本で上場している企業で、伝統的な日本企業という印象が強かった。私は日本語を話せませんし、日本企業で働いた経験もありません。私に日本企業をマネージする能力があるとは思えなかったのです。 

 しかし、CEOの柴田英利やリーダーシップ・チーム(経営層)との会話を通して、ルネサスで働いてみたい、と思うようになりました。

 ルネサスは海外企業のM&Aを複数回行うことで、組織体制・文化も「グローバル企業」になっていましたし、リーダーシップ・チームもグローバルな競争環境で勝つことができる人事制度を構築したいという意向を持っていました。実際、北米や欧州、中国など30カ国以上で事業を展開する当社は、日本以外の従業員が約6割です。