世界最大のEV電池メーカーとなった寧徳時代新能源科技(CATL) 出所:共同通信社/CFOTO

 自動車の電動化に伴い一躍自動車大国となり、もはや「自動車強国」ともなった中国。その一方、欧州自動車メーカーは社会情勢の影響も受けながら、これまで掲げてきた電動化方針の見直しを図りつつある。EV(電気自動車)の将来を不安視する声も聞かれる中、欧州メーカーは中国メーカーとの勝負の現状と今後をどう捉えているのか。自動車ライターの大谷達也氏がレポートする。

自動車大国としての中国

 世界最大の自動車生産国がどこか、ご存じだろうか。

 答えは、年間およそ3000万台を生産する中国。そして、同じく年間3000万台の自動車が販売される同国は、世界最大の自動車消費国でもある。

 そう聞いて「中国メーカーは低価格車の生産が得意で、中国市場では低価格車が人気なだけ」と早合点をする読者もいるだろう。もちろん、それはそれで重要なポイントだが、中国車はもはや中国市場だけのものではない。その証拠に、中国は2023年に491万台の新車を輸出。日本の442万台を上回り、史上初めて「世界最大の自動車輸出国」となった。

 つまり、今や中国車は中国国外でも人気なのだ。

 その理由として相変わらず低価格であることを挙げる向きもあるが、それだけではない。私は先ごろ中国製EVのBYDシールに試乗したが、その静粛性や乗り心地は日本車だけなく、より高級なヨーロッパ車と比べても遜色がないほど。つまり、もはや中国車の武器は低価格だけでなく、品質面でも日本車メーカーや欧州勢に迫りつつあるのだ。