シャープは東京国際フォーラムで開催した自社の技術展示イベント「シャープ テックデー」(SHARP Tech-Day'24 "Innovation Showcase")(2024年9月17日、18日)において、電気自動車(EV)のコンセプトモデル「LDK+」を公開した。親会社である台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と連携して、自動車業界に参入する可能性も示唆する。シャープにはどのような意図があるのか?
自動車メーカー以外からの参入が続くEVに家電のシャープが参入か
自動車業界は大きな転換期を迎えている。例えば電気自動車(EV)の台頭により、従来の自動車メーカーだけでなく、異業種から参入する企業が増えている。その代表例が、ソニーとホンダの合弁会社であるソニー・ホンダ・モビリティだ。同社が手掛けるEV「アフィーラ」は、2025年に北米で受注が始まり、26年春よりデリバリーがスタートするという。
また、バッテリーメーカーとしての出自を持ち、今やテスラと並ぶ世界的EVメーカーとなったBYDをはじめ、中国ではテック企業の参入例も多い。
そうした潮流の中、日本の家電メーカーであるシャープが、EVコンセプトモデル「LDK+」(エルディーケープラス)を発表し、自動車業界への参入を示唆した。
シャープは現在、「AI」「EV」「GREEN ENERGY」「INDUSTRY」「COMMUNICATION」などさまざまな分野で“Next Innovation”と呼ばれる次世代技術の開発を進めている。EVへの取り組みは、このNext Innovationの一環として位置付けられているという。
シャープがEV事業に乗り出す理由
シャープ専務執行役員CTO兼ネクストイノベーショングループ長の種谷元隆氏は、「シャープ テックデー」の説明会でEV事業への参入について次のように語った。
「従来、シャープはスマートライフ、スマートオフィスといった人々の生活空間を主な事業領域として価値を提供してきました。例えば、ご家庭でお使いいただいている冷蔵庫、テレビ、掃除機などのAIoT(注)家電、パソコンやマルチファンクションプリンターといったオフィスでの効率性向上を支援するデバイスなどです。
一方、われわれと深い関係にあるフォックスコン(鴻海)グループはすでにEVを開発し、生産しています。今回の戦略は、彼らのEVメーカーとしてのノウハウとシャープのテクノロジーを組み合わせることで新しい価値を生み出せるのではないかという発想からスタートしました」
(注)AIoT:AIとIoTを組み合わせたシャープの造語
シャープは家電メーカーとしてスマートライフ、スマートオフィスなどの領域で培ってきた技術をEVという新たな空間に生かしていこうというのだ。そこで重要になるのが、種谷氏が語る通り、親会社である台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業(以下フォックスコン)の存在だ。
フォックスコンはスマートフォンなど電子機器の受託生産を行う世界的なEMS(Electronics Manufacturing Services)企業だ。EV事業も手掛けており、すでにミドルサイズSUV「モデルC」を販売している。LDK+は同車のプラットフォームを採用することを前提としており、“走る・曲がる・止まる”というクルマの基本的な機能については、フォックスコンが担当するという。