過去には写真フィルム市場の衰退を契機に事業転換を成功させ、現在は、バイオや医療分野の「ヘルスケア」、半導体材料やディスプレイ材料等の「エレクトロニクス」、複合機の提供やオフィスのDXサポート・商用印刷分野ソリューションを展開する「ビジネスイノベーション」、そして写真関連製品等の「イメージング」という性格の異なる4つの事業体を持つ富士フイルムホールディングス(以下、富士フイルムHD)。各事業への投資と利益確保の最適化を図りながら、グループ全体の成長を目指す。その複雑なかじ取りを任された樋口昌之CFOに同社の強みと課題を聞いた。
2030年のあるべき姿から逆算した中期計画
――2024年4月に発表された新中期経営計画は、2024年から2030年までという長期のビジョンを基に、そこから逆算して2027年3月期の目標を設定しています。なぜこのような形を採っているのですか。
樋口昌之氏(以下・敬称略) これまでは当社も一般的な日本企業と同じ、3年ごとに中期経営計画(中計)を立ててきました。一方で、当社は2030年度に向けたCSR計画である「Sustainable Value Plan2030」を策定しており、その実現に向けて事業活動を進めています。2023年の時点で、2024年からの次期中計を策定する際、CSR計画のターゲットである2030年は、3年サイクルの場合わずか2回転だということに気付いたのです。
財務目標についても、単なる数字の積み上げではなく、2030年のあるべき姿を定義し、世界TOP Tierの事業を目指す上での一つのステップとして今後3年間の目標数値を定めました。2030年度の目標は全社の売上・営業利益および、セグメントごとの営業利益率の方向性のみ設定しました。そのため、当社としては初めての試みですが、2030年までの中長期を見据えた中計となっています。
具体的には、2030年度に売上高4兆円、売上高営業利益率15%以上という目標を掲げています。また資本効率面ではROE10%以上、ROIC(投下資本利益率)9%以上としています。各事業セグメントの成長戦略を合算し、企業全体としてこの目標を達成することを目指しています。