画像提供:レゾナック

 化学メーカーのレゾナック・ホールディングス(以下、レゾナック)は、半導体の材料や製造装置を手掛ける日米10社の企業連合「US-JOINT」を米カリフォルニア州シリコンバレーに設立すると発表した。半導体の製造工程における後半部分にあたる「後工程」の技術開発・評価に取り組む連合で、2025年第2四半期の稼働開始を目指す。記者発表会でレゾナック業務執行役の阿部秀則氏が、US-JOINT設立の狙い、米国で設立する意義などを説明した。

生成AIの普及で注目集まる「後工程」

 レゾナックは半導体製造向けの複数の材料で高い世界シェアを獲得している。特に後工程に使われる銅張積層板やダイアタッチフィルムなどは世界シェア1位である。

 半導体の製造には大きく分けてウエハ上に回路を形成する前工程と、ウエハから半導体チップを切り出してパッケージングする後工程がある。前工程ではすでに数nmまで回路の微細化が進んでおり、物理的な限界が近づいている。

 対する後工程は、1つのパッケージ内に複数チップを重ねたり、並べたりすることで半導体を高性能化できる余地がある。「2.xD」や「3D」と呼ばれる最先端のパッケージング技術で、複数の材料を組み合わせて研究開発を積み重ねてきたレゾナックが強みを持つ工程だ。

レゾナック記者会見資料より
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 生成AIの普及を受け、データセンターのAIサーバーやデバイスに搭載する半導体の能力向上が必要とされている現在、後工程の技術革新に期待が寄せられている。

 そうした中、後工程の材料に強みを持つレゾナックは他社と連携し、米国のシリコンバレーにUS-JOINTを立ち上げた。

 なぜシリコンバレーなのか。同社業務執行役の阿部秀則氏は「シリコンバレーに在籍するわれわれの最終顧客である大手テック企業やファブレスを含めた半導体企業と実際に話をすることが重要だから」だとその理由を説明する。

レゾナック 業務執行役の阿部秀則氏

 生成AIの登場でデータ処理能力の向上が求められていることから、GAFAMなどの大手テック企業が自社のデータセンターなどに使う半導体の独自開発に乗り出し始めている。

 今後の半導体業界においては、これまで半導体の設計・製造のリーダーシップを取ってきたインテルやNVDIAといった半導体企業のみならず、こうした大手テック企業の存在感が増していくとみられる。

 US -JOINTは、これまでは「顧客の顧客」だった大手テック企業などに対して、新しいパッケージング技術や材料、装置を提案したり、共同での検証を行っていくという。

 阿部氏は「半導体業界では最初に採用された技術がデファクトスタンダードになっていく場合が多い」と話す。大手テック企業などと日常的にコミュニケーションをとり、将来に業界の標準になっていく半導体材料・装置を早めに見極めるのがUS -JOINTの主な狙いというわけだ。