レゾナック・ホールディングス 取締役 常務執行役員 最高人事責任者(CHRO)の今井のり氏(撮影:酒井俊春)

 2023年1月に昭和電工と日立化成が統合して誕生したレゾナック。統合に伴い最高人事責任者(CHRO)を新たに設置し、新体制による人材育成と企業文化の変革を進めている。同社が求める人材像、目指す企業文化とは? 統合プロジェクトで日立化成側のリーダーを務め、CHROとなった今井のり氏に、これまでの取り組みとその成果について話を聞いた。

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文化醸成や人材育成はCEOとCHROの役割

――今井さんは、もともと人事の専門家ではなかったそうですが、レゾナック発足に伴い最高人事責任者(CHRO)に就任しました。どういった経緯だったのですか。

今井 のり/レゾナック・ホールディングス 取締役 常務執行役員 最高人事責任者(CHRO)

慶応義塾大学理工学部卒業後、旧日立化成に入社。 経営企画、オープンイノベーション、米国駐在(営業)、蓄電池やモビリティーなど複数事業の企画・事業統括を経て、旧日立化成で2019年執行役に就任。昭和電工との統合では、旧日立化成側の責任者としてリード。ビジネスパートナーとしてのHR改革などを推進しながら、パーパス・バリューを基に新しい企業文化の醸成、事業戦略にマッチした人材育成に注力。

今井のり氏(以下敬称略) 昭和電工と日立化成が統合する際に、髙橋秀仁(レゾナック・ホールディングスCEO)は昭和電工側の、私は日立化成側の統合のリーダーを務めていました。髙橋がレゾナック・ホールディングスのCEOに就任するにあたり、「CFO(最高財務責任者)とCSO(最高戦略責任者)は外部から採用するから、CHROをやってほしい」と言われ、「いいですよ」と返事をしたのがきっかけです。

 実は、経営企画部門にいた7、8年前に、「機能性化学メーカーの戦略とは」と考えたことがあり、「究極は、人なのでは」と結論付けたことが今につながっています。当時から人材のことや、企業文化、組織については興味があり、課題意識も高かったので、「大変だけど、本気で変えていく」という髙橋の思いに共感して、CHROを引き受けることにしました。

――髙橋さんは日本GEでの経験を踏まえて、人事(HR)の重要性をよく説かれています。統合後、レゾナックの経営と人事はシンクロしているでしょうか。当事者としてどう見ていますか。

今井 短期間のうちに規模の大きな2つの会社が一体化できた背景には、「チーム経営」があります。短中期の事業上の課題やポートフォリオ改革はCFOやCSO、事業部長に完全に権限委譲し、より長期的な課題、すなわち文化醸成や人材育成はCEOとCHROに一任するという役割分担があるからこそ、うまくいっているのだと思います。

 髙橋はどちらかというとビジョン型のリーダーです。ただ、会社として達成したい目標は明確でも、そこに至る道については、直接指示するわけではありません。そのため、そこまでの道筋は私が作っています。明確な役割分担に基づいて、やりたいことをやらせてもらっています。

出所:レゾナック「共創型人材の育成と企業文化醸成~レゾナックの挑戦~」
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――レゾナックが目指す企業文化の変革では、「共創」がキーワードの1つになっています。機能性化学メーカーにおける「共創型人材」とは、具体的にどのような役割、能力を持つ人材と位置付けていますか。

今井 私たち機能性化学メーカーは最終製品を作っているわけではありません。半導体や自動車向けに求められる機能性材料を、その都度、カスタマイズして生み出しています。世の中にあるいろいろな技術を擦り合わせ、装置メーカーなどともコラボしながら、その機能に近づけていくわけです。

 試行錯誤の連続の中でできるやり方なので、自らが目的意識を持って、「こうしたら面白いんじゃないか」「うまくいくんじゃないか」と挑戦する人が社内にどれだけいるかが重要になります。

 ただ、みんなバックグラウンドが違うので、議論はすぐにまとまりません。相手のことを理解するところからスタートするので、それをファシリテートして、解決に導いたり、時には健全な摩擦を起こしたりすることも必要です。

 そしてこれこそが私たちのイノベーションの基礎であり、生き抜くために大事な価値の源泉です。これを私たちは「共創型人材」と名付け、自らの志で社会課題の解決を目指し、会社や部門を超えて、いろいろな人たちとつながり、共創を通じて創造的に変革と課題解決をリードできる人材と定義しています。