パナソニックホールディングス傘下でBtoBのソフト・ハード開発、システム構築を手掛けるパナソニックコネクトが、全社的なマーケティング改革に取り組んでいる。マーケティング施策立案プロセスの見直しから、新たな組織風土、企業文化の醸成にまで及ぶ同社の改革。どのような狙いで、どんな施策を進めているのか。デザイン&マーケティング本部にてデジタルカスタマーエクスペリエンスを統括している関口昭如氏に話を聞いた。
当時の課題は4つ、根底には社内の「顧客を見ず」という空気の存在
――2018年からパナソニック コネクトでマーケティングを軸とした改革を進めていますが、当時の課題は何だったのでしょうか。
関口 昭如氏(以下敬称略) 当時は顧客の困りごとは何かを深掘りせずに、「商品ができたのでマーケティング施策を作りました。そこでメッセージはこうなりました」と、広報・マーケの手法 “How”だけが先行している状態でした。そのため、メッセージを作っても顧客に刺さりませんでした。そして、顧客よりも上司にマーケティングプランの了承を得ることに、従業員の意識が向いていたように感じました。
そこで顧客視点で課題を抽出し、4つにまとめました。1つ目は「顧客視点の解像度不足」です。B2Bは製品の使用用途が明確なことが多いため、顧客視点が薄くなっていたようです。
2つ目に「市場環境の変化を忘れがち」という傾向もありました。顧客との関係が固定的であるゆえ、「明日ライバルが新商品を出してきて自分たちの顧客を奪うかもしれない」という変化に疎くなっていたように感じます。そのような状況で良いわけがなく、逆に変化への緊張感を維持しなくてはなりません。
3つ目の課題として、「顧客接点の連携不足」もありました。営業とマーケティングだけでなく開発やサポートを含め、顧客接点の一貫性を保てていませんでした。最後に「根本的な価値提案への理解」です。効率的な組織運営が先に立ち、顧客にどんな価値を提供するかが明確になっていないことが課題でした。顧客価値については、面倒でもいま一度、関係者全員で理解し納得する必要がありますが、それがおろそかだったように思います。
――顧客への意識をより強固にすることを大切ということですが、特にどこに注意していますか。
関口 顧客が求める価値を明確にしておき、製品やサービスに、価値を生み出すための「種」を作り盛り込むことです。その価値は、当然のことながら顧客に使っていただくことで実感できますから、製品やサービスの効果を維持し、使い続けていただくようなリレーションマーケティング活動も大切です。
また、顧客企業の中でも異なる要望が存在します。新しいソフトやシステムを導入するとき、現場は今までの作業方法に合ったものを望むのに対し、経営層は効率化を求め必要なら既存の方法を変えたいと思う場合があります。マーケティング戦略は、このように顧客の中に違う考えが存在することを理解した上で立てていく必要があります。