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タイヤ・ゴム事業のバリューチェーンから得られるあらゆるデータを活用し、「ソリューションカンパニー」への転身を図ろうとしているブリヂストン。この取り組みを支えるのが、各部門でデータを用いてビジネス・業務を変革できる人材の育成だ。どのような方法で人材育成に取り組んでいるのか。ブリヂストン デジタルソリューションAI・IoT企画開発部門長の花塚泰史氏と人的創造性向上部門長の水上雄介氏に話を聞いた。
データサイエンスが必須教養であるワケ
——ブリヂストンは全社を挙げてデータサイエンティストの育成に取り組んでいます。なぜでしょうか。
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2003年ブリヂストン入社。タイヤ先行技術開発部に配属。以後一貫してデータ分析業務を担当。2013年総合研究大学院大学博士課程了、博士(学術)。2017年新設のデジタルソリューションセンターへ異動。2023年1月より現職。
花塚泰史氏(以下敬称略) 当社が「サステナブルなソリューションカンパニー」を目指しているからです。われわれのコア事業はタイヤ事業ですが、外部環境は激しく変化しています。例えば主な販売先の一つである自動車業界ではCASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)やMaaS(Mobility as a Service)などが進んでいます。その中で、われわれしか取得・分析できないデータを生かして「ソリューション」を生み、お客さまの困りごとを解決することで、競争優位性を高めようとしています。
当社はタイヤの原材料の開発から製造、販売、リサイクルまで、長大なバリューチェーンを有しており、各所にわれわれにしか取得できないデータが蓄積されています。これらのデータを効果的に活用するためには、各部署でデータやデジタル技術を事業にどのように活かしていくかを考える必要があり、そのためにはデータを解析できる「人財」の育成が不可欠だと考えています。
当社のデジタル人財育成では、まず専門性の高い上級者を育て、そこから裾野を広げて全社員に育成の対象を拡大してきました。私が部門長を務めるデジタルソリューションAI・IoT企画開発部門の前身となる組織は2017年に発足し、各部署で統計的な分析やプログラミングの経験がある担当者を招聘(しょうへい)して、先端的なデータサイエンスに関する知識を身に着けてもらうことで専門性を高めていったという経緯があります。
一方、実ビジネスでデジタル技術を活用するためには、ビジネスの問題をデジタル技術で解決できる課題に翻訳できる人財が必要です。そこで「全社員がデータの意味や活用方法を理解し、それを業務に生かせる」ことを目的に研修制度を充実させています。
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2005年ブリヂストン入社。自動車メーカー向け営業部に配属となり、国内メーカーに加え、欧米メーカーも幅広く担当。2016年に秘書課へと異動、経営トップであるCEOの業務秘書を担当。2022年10月より現職。
水上雄介氏(以下敬称略) 当社が手がけるソリューションビジネスの一例として、輸送事業者向けのサブスク型のサービス「トータルパッケージプラン(TPP)」があります。これは、タイヤの売り切りではなく、お客さまの使用条件に合わせた最適なタイヤの提案から、メンテナンス・点検管理・予算管理などのマネジメント業務までをブリヂストンが担うことで、安全運行・環境負荷低減・業務効率化・経費削減に貢献するソリューションサービスです。車両位置やタイヤの空気圧・温度などを遠隔でモニタリングするメニューもあり、リアルとデジタルの両面からお客さまの足元を支えます。
花塚の部署のように、最先端のデータサイエンスを理解する専門家ももちろん必要です。ただ、TPPのように販売・サービス、生産をはじめとした現場においても、データやデジタル技術を使って課題解決ができる人財を育成することが必要と考えています。
──どのような人財育成制度を用意しているのですか。
花塚 初級(Assistant Data Scientists)、中級(ソリューションフィールドエンジニア)、上級(AI/アルゴリズムエキスパート)と、習熟度別の研修コースを用意しています。