セブン-イレブン・ジャパン 商品本部 次世代商品開発 シニアマーチャンダイザーの赤松稔也氏(撮影:今祥雄)

 セブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン)は2023年7月より、持続可能な食品原材料調達と環境への配慮を打ち出した商品シリーズ「みらいデリ」を販売している。えんどう豆など植物性原料でツナや鶏肉を代替している他、工場野菜を使ったサラダも販売する。「サステナブルな商品であってもおいしさ最優先」と唱えるみらいデリ商品担当の赤松稔也氏に話を聞いた。

過去に失敗したのは「おいしさに課題があった」から

──これまでもコンビニ各社はサステナブル関連商品を打ち出してきましたが、どれも大成功とはいえない結果に終わっています。「みらいデリ」シリーズはどんな点にこだわっていますか?

赤松 稔也/セブン-イレブン・ジャパン 商品本部 次世代商品開発 シニアマーチャンダイザー(※取材時は商品本部 デイリー部 米飯麺類 シニアマーチャンダイザー)

1977年、兵庫県生まれ。2001年入社。店舗経営相談員を経て、商品本部 デイリー部 米飯麺類 シニアマーチャンダイザーとして、おにぎり開発などに従事する。2024年3月より現職。

赤松稔也氏(以下敬称略) とにかく「おいしさ」にこだわっています。みらいデリの15アイテムは環境に配慮した原材料を使用していますが、必ずしも環境に対する意識が高いお客さまだけに向けて販売しているわけではありません。多くのお客さまは「その商品がおいしいか、おいしくないか」で購買を決めているのが本当のところでしょう。そのため、食べておいしく結果的に環境にも優しい、という商品を目指しています。

 例えば「黄えんどう豆」由来の原料を使用した「みらいデリおむすび 和風ツナマヨネーズ」は、通常のツナマヨネーズおにぎりと食べ比べても、違いが分からないほどのクオリティーに仕上げています。

 みらいデリシリーズの売り上げは好調で、特に20代の若い世代から高い評価をいただいております。特に、前述の和風ツナマヨネーズおにぎりは、ツナ100%の商品と比較しても、販売個数がほとんど変わらないほどの売れ筋となっています。

 実は、セブン-イレブンとして大々的にサステナブル商品シリーズに取り組むのは初めてではありません。これまでも代替肉などを使った商品を販売してきましたが、正直、売れ行きは芳しくありませんでした。みらいデリでは、徹底的においしさにこだわり、強力なサプライヤー各社と組んで本格的に「肉や魚と遜色ない」植物性由来タンパク質の開発に取り組んでいるのです。

──そもそも、なぜみらいデリシリーズを開始したのですか?

赤松 「原材料の安定調達」と「企業の社会的価値の追求」の2つの目的を達成するためです。

 前者に関しては、コロナ禍でタイ産鶏肉が輸入されなくなった、という問題が象徴的です。また、世界中で漁獲量が減少傾向にあったり、天候不順で野菜の生産に波があったりするなど、外部環境が急速に変化していて、原材料の安定調達が難しい状況に置かれているのです。原材料の安定調達が難しくなると、一定の価格で商品を販売することも難しくなってしまいます。

 そこで、みらいデリシリーズの「ナゲット」「チョレギサラダ」では原材料であるお肉などの動物性タンパク質は黄えんどう豆などの植物性タンパク質で代替し、サラダの野菜は工場野菜を使用しています。コロナ禍が明けた現在は、比較的調達は安定していますが、10~20年先の保証はありません。足元で使える原材料でおいしい商品を開発できると、安定した販売計画の策定にもつながります。