三井物産 代表取締役専務執行役員CDIOの松井透氏(撮影:榊水麗)

 大手総合商社の三井物産が進めるDX戦略は、事業のデジタルによる創造や強化(DX事業戦略)、データ駆動経営の推進(DD経営戦略)、そしてビジネスとデジタルの双方に精通した人材育成(DX人材戦略)を3本の柱としている。これらのうち、DX人材戦略の方向性について、デジタル戦略の司令塔であるCDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー)の松井透氏に聞いた。

DX組織発足と全社DX戦略の流れ

――松井さんは長年、三井物産の事業本部でキャリアを積んできたそうですが、デジタルのバックグラウンドを特に持たない中、CDIOに就任されたのはどんな経緯からですか。

松井透氏(以下・敬称略) 私は1990年に入社以来、長く石油、ガスなどのエネルギー開発の分野で働いてきましたが、2018年に現場を離れ、本社の経営企画部に異動しました。そこで2年ほど部長を務めたことが現在の役割のベースになっています。

 当社では伝統的に、全社的な新しい課題に取り組む際には経営企画部の中でプロジェクトを立ち上げ、ある程度軌道に乗せてからスピンアウトするプロセスをとっています。ちょうど2018年のころは、企業のDXが必要となってきた時期であり、当社もDXを推進するために2018年に経営企画部にDXチームを発足しました。

 その後、今では当たり前ですが、このDXチームが全社的なDXを推進するためにはITの力が必要だと感じました。そこで、かねてよりITの知見を蓄積している当社のIT推進部と一緒にDXを進めるべきだと、同部の部長であった真野雄司や経営幹部と徹底的に議論しました。

 結果、デジタルで新しい事業を創造し、強化していく「攻め」のDXチームと従来から当社の事業をデジタルで支えてきた「守り」のIT推進部を統合することで、事業とITインフラの活用を一体で進める「デジタル総合戦略部」が2019年10月に誕生し、真野が初代部長となりました。そして、2020年4月にDXとITを融合した戦略を明確にするためにCDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー)職を新設したという経緯です。