写真:J_News_photo - stock.adobe.com

 三井物産は、総合商社として金属資源・エネルギー、機械・インフラ、化学品など多くの事業を展開している。これをさらに広い領域で事業展開することを目指し、三井物産は現在、DXを進めている。その目的は、社員の強い「個」がアントレプレナーシップを発揮し、自らビジネスをつくる集団へと変革するため。目指す姿は、「人とデータの三井」である。

 三井物産のDXは、既存事業の生産性やコスト競争力の向上に加え、本部横断的に新たな事業創出を目指すための、6つのCorporate Strategyを支えるドライバーという位置付けである。そして、プラットフォームの構築まで目指す戦略である。その三井物産の新事業創造に向けたDXの考え方と取り組み状況をまとめた。

※:(1)事業経営力強化、(2)財務戦略・ポートフォリオ経営の進化、(3)人材戦略、(4)Strategic Focus(エネルギーソリューション、ヘルスケア・ニュートリション、マーケット・アジア)、(5)基盤事業の収益力強化と新事業への挑戦。(6)サステナビリティ経営/ESGの進化

【長期ビジョンとDX総合戦略】新事業創造に強い意思

 まず、三井物産は2017年に発表した「長期業態ビジョン2030」で、「つなぐからつくる」へ進化を目指す方向性を示した。これは、これまで企業や商品などを「つなぐ」ことで価値を生むことが多かった総合商社の機能・役割を超えて、自ら主体的にビジネスを「つくる」存在へ進化していこうという強い意思を示したものである。

 そして、2020年5月に発表された「中期経営計画2023」では、新たなミッション、ビジョン、バリューのもとで進める「変革と成長」のために、DXを強力に押し進める方針が、「中期経営計画2023の進捗及び2023年3月期事業計画」(2022年5月)では、「Digital Transformation, everywhere(DXをすべての事業に)」という方針が示された。

 その後、2022年6月に発表された「DX総合戦略Vision」では、具体的な方針として、「DX事業戦略」と「データドリブン(DD)経営戦略」の2つの戦略を挙げている。

・DX事業戦略:各事業現場の保有するデータにデジタルの力を掛け合わせ、新たな価値を生み出すことで、事業の強化を目指す。

・DD経営戦略:データを徹底的に使い倒すことで、迅速かつ正確な意思決定を行い、事業経営の強化を図る。

 この2つの戦略の実行のためには、全役職員がデジタルを標準装備とすることが不可欠であり、同社はDXによる絶え間ない革新を企業文化とする強い意思を示している。