三菱商事は幅広い産業分野で国際的な事業を行う総合商社だが、DXを多様なビジネスで横断的に展開し、新たなサービス事業を提供する準備を進めている。同社のDX関連の取り組みは始まったばかりで成果はまだ多くはないが、産業横断を狙った全社的な体制・組織づくりは注目すべきである。
DX先進企業のDXはどこがすごいのか。その戦略とビジネスモデルを研究する幡鎌博氏(デジタル・ビジネスモデル研究所代表)が解説します。
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【中期計画】DXによる新サービス展開に強い意思
2018年に公表された2019年から3カ年の中期計画「中期経営戦略2021」。ここでは、事業構想⼒とデジタル戦略の強化が掲げられ、新設する事業構想室・デジタル戦略部と連携し新たなビジネスモデル構築にチャレンジする方針が示されていた。
だが、その説明資料には、こうも書かれていた。
「デジタル化の急激な進展もあり加速度的に市場が拡大している分野、すなわち『サービス』の分野は、巨大な顧客基盤を有することでポジションを取る強力なプレイヤーがひしめき合う領域です。次の中経期間は、『当社としてこの分野に参入すべきか否か』に決断を下す3年になると考えています」
つまり、この時点では、本格的なDXによる新サービスへの展開にはまだ慎重であった。
それが変わったのが、昨年5月に発表された「中期経営戦略2024」。ここでは、DXによる新サービス展開への強い意思が示されている。
「DX機能をサービス事業として展開し、産業全体の価値向上に貢献」「新規事業と最適サービスの提供による豊かな地域社会の実現に貢献」、さらに商社らしく「事業知見を活かした産業横断型DX機能の開発・提供を加速」という言葉が並び、DX戦略(リアルとデジタルの融合)を目指す姿勢が明確化された。
そして、将来的には「ビジネスモデルが最適化された産業横断型デジタルエコシステムを構築」を目指すという意欲的な目標も、ここにははっきりと掲げられている。