
出光興産は、カーボンニュートラルの進展に伴い化石燃料の需要が減少する中、事業ポートフォリオの転換を図っている。2030年を節目と位置づけ、既存事業の収益向上や従業員の成長、ビジネスプラットフォームの進化を図るべく、2022年からDXを推進してきた。大きな特色は、DXの起点となる社員のリテラシー向上を目的に「一人ひとりのDX」を推進していることだ。同社のDXの取り組みをけん引する、専務執行役員 CDO 小林総一に詳細について聞いた。
「ひとのチカラ」を重視し、自律的・自発的に行動ができる人材を育成
──出光興産におけるDXにおいて、特に注力されている取り組みはどのような点でしょうか。
小林総一氏(以下敬称略) 最も注力しているのは、業務プロセスをどう変えていくかという点です。
業務プロセスを変えると言っても、例えば、ワークフローの段階を変えるだけであればデジタルを使わなくてもできます。一方で、ワークフローの中身を可視化したり、どこに問題点があるかを抽出したりするためにはデジタル化が必要です。そういった意味で、当社では、業務プロセスの改善に力を入れ、そのためのデジタルの活用を推進しているところです。
──出光興産ではデジタル変革の鍵として「ひとのチカラ」を挙げています。一口に「DX人材」と言ってもさまざまなアプローチがありますが、会社としてDX人材をどのように定義していますか。また、デジタル活用によって業務がどのように変革していくことを期待していますか。
小林 当社におけるDX人材は、「業務プロセスを最適化し、新たな価値を創出できるような人材」と定義しています。
「ひとのチカラ」で最も重要なのは、自律的・自発的に行動ができる人材を作ることです。デジタルにこだわるのではなく、自ら挑戦できる社員をどう育成できるかが重要だと考えています。
そのためには、ただ「自律的に、自発的に」と掛け声をかけるだけではだめで、やはり基礎的な知識などを身につけたり、トレーニングをしたりする機会を作り、得たものを業務に反映し、実践してもらうことが大切です。
今、当社で行っているDXのベーシック研修も、あくまでも奨励という言い方をしています。義務や強制しているものではありません。いかに、社員が自発的に自分の業務とデジタルをつなぎ合わせられるかを大事にしていきたいと考えています。それが必然的にボトムアップの力になっていくと思っています。