
2025年1月、北米での販売を開始したソニー・ホンダモビリティの新EV「AFEELA(アフィーラ)」。EV世界首位の販売台数を誇る米テスラや、価格競争力のある中国勢が台頭 する世界の自動車市場において、どのように戦いを挑むのか。前編に続き、2024年11月に 書籍『ソニー×ホンダ 革新を背負う者たち』(日経BP 日本経済新聞出版)を出版した日本経済新聞社記者の古川慶一氏と田辺静氏に、アフィーラが打ち出す差別化のポイントや、 同社が「テスラ一強」の地である北米で見いだす勝機について聞いた。(後編/全2回)
従来のEVとアフィーラとの「決定的な違い」
──前編では、異業種のソニーとホンダがタッグを組んだ舞台裏について聞きました。著書『ソニー×ホンダ 革新を背負う者たち』では、アフィーラの開発背景について詳しく解説していますが、同社は最終的にどのような車づくりを目指しているのでしょうか。
古川慶一氏(以下敬称略) アフィーラのイメージの源流は、かつてソニーのスマホ事業を率いた川西泉氏(現ソニー・ホンダモビリティ社長兼COO)と十時裕樹氏(現ソニーグループ社長COO兼CFO)が2017年に交わした会話の中身にあります。
一般的な自動車メーカーは、エンジンをバッテリーとモーターに置き換える形でEVを開発してきましたが、この2人が当時から思案していたのは、従来のようなEVではなく「走るスマホ」でした。では、そのアフィーラの最大の価値は何かというと、車を「買って終わり」ではなく、購入後も「進化が続く」点だと考えています。
例えば、米テスラが導入している「OTA(オーバー・ジ・エア)」のような機能を採り入れ、車の購入後も機能をアップデートしたり、車両に保存されたデータの一部を外部に公開し、スマホのアプリストアと同様に外部のエンジニアやクリエーターが自由に開発できるようにしたり、という具合です。
2023年10月に開催されたアフィーラの国内初披露イベントでは、川西社長がアフィーラを「いじり倒せるガジェット」と表現していました。このように異分野の多様な人材が知を持ち寄って集まり、議論し、新たな価値を生み出す過程は、従来の自動車メーカーではできないような車を目指しているからこそ実現できるのではないでしょうか。