撮影:酒井俊春

 サステナビリティへの対応は、今や最も重要な経営戦略と言っても過言ではない。一方で、コストと収益性、短期目標と中長期目標など、両立を図るのが難しい要素も多く、企業はありたい「未来」に向けて、投資家を巻き込みながら大胆な事業変革を断行していく必要がある。本連載では『サステナビリティとコーポレートファイナンス』(砂川伸幸、山口敦之編著/日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集(執筆は澤邉紀生と川本隆雄)。サステナビリティに真摯に向き合うレゾナック・ホールディングス(HD)の取り組みを紹介するとともに、財務運営・事業ポートフォリオ戦略の論点を整理する。

 今回は、レゾナックHDの長期ビジョン「サステナビリティビジョン2030」をひも解きながら、現状を明らかにする。

レゾナック・ホールディングスのサステナビリティに関する取り組み

■「長期ビジョン」と「サステナビリティビジョン2030」

 同社は、パーパスに基づき「化学の力で社会を変える」ために、経営の根幹にサステナビリティの概念を据える必要があると考えている。実際、染宮秀樹CFOは、我々とのインタビューにおいて下記のように言及していた。

 会社全体として、サステナビリティ重要課題、いわゆるマテリアリティを定義して、サステナビリティを経営の根幹に据えるというのが会社の経営理念を考えた時の一丁目一番地で取り組んだことなのです。

 その一環として、同社は「サステナビリティビジョン2030」を定め、「長期ビジョン」を達成するために、社会からの期待と同社にとっての重要度の両面から検討した経営課題となるサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定し、社内への浸透を図っている。

 同社の「長期ビジョン」は、「共創型化学会社」として、「世界トップクラスの機能性化学メーカー」になるというものである。具体的には、2030年に向けて①ワールドクラスの事業競争力と収益力を有する「世界で戦える会社」、②イノベーション力と事業開発力を有する「持続可能なグローバル社会に貢献する会社」、③共創の価値観を持つ競争力のある人材の育成力を有する「国内の製造業を代表する共創型人材創出企業」を目指していく。