撮影:酒井俊春

 サステナビリティへの対応は、今や最も重要な経営戦略と言っても過言ではない。一方で、コストと収益性、短期目標と中長期目標など、両立を図るのが難しい要素も多く、企業はありたい「未来」に向けて、投資家を巻き込みながら大胆な事業変革を断行していく必要がある。本連載では『サステナビリティとコーポレートファイナンス』(砂川伸幸、山口敦之編著/日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集(執筆は澤邉紀生と川本隆雄)。サステナビリティに真摯に向き合うレゾナック・ホールディングス(HD)の取り組みを紹介するとともに、財務運営・事業ポートフォリオ戦略の論点を整理する。

 今回は、長期ビジョンとして「共創型化学会社」を目指すレゾナックの人材育成について解説する。

「共創型化学会社」「 世界トップクラスの機能性化学メーカー」実現に向けた取り組み

■ レゾナック人的資本経営モデルによる人材育成と組織文化の醸成

 同社は、「戦略(ポートフォリオ改革)」×「個の能力」×「組織文化」によって企業価値は実現されると考えている(図表7-7)。

 総合化学メーカーの中期経営計画などはどこも似通ったものになりがちであり、戦略自体は差別化要因とならず、コモディティ化しているものとCEOの髙橋秀仁氏やCFOの染宮氏は考えている。長期ビジョンである「世界トップクラスの機能性化学メーカー」を「共創型化学会社」として実現するために、「個の能力」を伸ばし固有の「組織文化」を醸成することで、競合他社との差別化をはかっていく方針が示されている。

 染宮CFOはこれについて下記のように述べている。

 髙橋(CEO)も私もよく言っている言葉は、戦略は「コモディティ」。差別化は「エグゼキューション」。しっかりと「エグゼキューション」するためには、従業員の「個の能力」と、それを十分発揮するための「組織文化」が必要だ。そして、エグゼキューション力を高めるために、人を育てるという仕組みの部分が大きいと思います。