三菱電機の中で、FA事業における中核工場の役割を担う名古屋製作所は、同社が推進する工場のデジタル化、データ活用ソリューションである「e-F@ctory」の実践拠点でもある。多品種変量生産の時代に重要度を増す製造業におけるデジタル化の現状と、デジタル時代の工場における「人」の役割について聞いた。
■【前編】三菱電機のものづくりを支える名古屋製作所 田中貴久所長が語る、グループ工場の「親」として果たす責任
■【後編】三菱電機の“FA中核工場”名古屋製作所長に聞く、デジタル工場でもなお「無人」にはならない理由(今回)
時代の要請に応える「e-F@ctory」ソリューションを推進
――ものづくりの工程や社会システムの運用において、デジタル空間でシミュレーションを行う「デジタルツイン」の考えが注目されています。今、工場のデジタル化はどこまで進展しているのでしょうか。
田中貴久氏(以下・敬称略) 多品種変量生産の時代になり、生産設備を早く立ち上げなくてはいけない、また段取り替えを早くしなくてはいけないというニーズが急増しています。事前のシミュレーションは、もはや必須といってもいい状況です。
生産現場におけるシミュレーションの考え方は、かなり以前から存在していて、徐々に採用されていたのですが、ここ数年のデジタル技術の進展に伴い、一気に進んだ感があります。
これには、製造業の産業形態が変わってきていることも関係しています。かつては、自社の製品は自社の工場で作って、お客さまに届ける形が当たり前でした。そこにEMS(Electronics Manufacturing Service:電子機器受託製造)という形態で、製造に特化した第三者の企業が、さまざまな企業の製品をまとめて生産するビジネスモデルが登場しました。
当社のようなFAのメーカーは、EMSの企業に製品を納品することも増えていますが、彼らは生産の効率を上げるために、シミュレーションの技術に特に力を入れています。