3000万点を超えるラインアップの規格部品が標準2日で届く確実短納期を実現したミスミグループ。日本の製造業が労働生産性の向上を目指す際のボトルネックであった「調達現場の課題」に対し、どのように新たな価値を創造し、最大化していったのか。ミスミグループ本社・常務執行役員ID企業体社長の吉田 光伸氏に、同グループのDXの全貌とその要諦を語る。
調達領域のボトルネックを解消し、日本の製造DXの追い風に
製造業に向けた機械部品の製造販売を行うミスミグループ。売り上げの大半が受注生産であるにもかかわらず、「受注から標準2日で出荷」という高度なサプライチェーンと生産システムを築き上げてきた。
そして近年急成長しているサービスがオンライン機械部品調達AIプラットフォーム「meviy(メビー)」だ。これまで2週間から1カ月程度かかっていた特注機械部品の調達時間を9割削減する、圧倒的な「時間価値」が高く評価され、2023年には「ものづくり日本大賞」で最高峰の内閣総理大臣賞を受賞している。
長らく日本経済をけん引してきた製造業は、労働人口の減少からなる人手不足、働き方改革や非効率からなる時間不足に苦しんできた。それらの課題を打開する鍵はデジタル活用にあるが、設計・調達・製造・販売のエンジニアリングチェーンの中で、特に調達領域は紙やFAXの利用率が高く、製造DXのボトルネックとなっている(下図)。実際に経済産業省の「ものづくり白書」によれば、2020年時点で協力企業への設計指示を紙で行う企業は54.3%もある。
ミスミグループ本社・常務執行役員ID企業体社長の吉田 光伸氏は、紙の図面を用いることで生じる「作図」「見積もり」、そして見積もりや納期の「待ち時間」を「時間の三重苦」と言い表す。1500点の部品で構成される装置の場合、紙ベースでの部品の調達にトータルで約1000時間かかるという試算結果もあるという。
「このままでは調達が日本製造業のアキレス腱(けん)になりかねません。meviyによる価値創造の根底には、この調達現場の課題を私たちのDXで解決し、日本の製造業全体のDXへと広げていきたいという思いがありました」と、力強く語った吉田氏の講演の中から、同グループがイノベーションを生み出し、DXを実行していった軌跡をご紹介する。