GMOインターネットグループは2024年6月18日、AIとロボット、ドローンの導入・活用支援を軸とした新会社GMO AI&ロボティクス商事(以下、GMO AIR)を設立した。グループ各社が展開するネット接続、ドメイン、クラウド、決裁、セキュリティー、データセンター、メンテナンスといったインターネットインフラ商材や金融事業を活用し、AIとロボットの普及を図っていくことを目的としている。同社社長に就任した内田朋宏氏(GMOインターネットグループ常務執行役員)に新事業の将来展望について話を聞いた。
生成系AIをはじめ日進月歩で進化するAI技術―業務の効率化やイノベーションの創出の鍵として期待がかかる一方、まだその適切な理解や体制が技術の進歩に追いつけていません。本特集ではこの分野を代表するキーパーソンの方々へのインタビューを通じ、ビジネスシーンにおけるAIとの向き合い方や可能性、そして人とAIで創造する未来について考察していきます。
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なぜものづくりではなく総合商社なのか
──AIやロボットに関わる新たな事業展開を始めるに当たってさまざまな選択肢があったかと思いますが、商社という事業形態にした理由は何ですか。
内田朋宏氏(以下敬称略) まず背景から説明しますと、GMOインターネットグループでは、これまでの産業革命が55年周期で起きてきたことに基づき、グループの成長戦略を描いています。
Windows95の登場で1995年にインターネット革命が始まったことを考えると、それから55年のちょうど半分に当たる2022年11月にChatGPTが登場しました。当社グループはインターネット革命の前半戦で大きく成長してきましたが、これからの後半戦はAIロボティクス革命になるという認識の下、今後の生き残りに向けてコミットしていかなければなりません。
そこで、「なぜ商社か」という点ですが、メーカーになってしまうと財務的な余力の問題がありますし、世界的に生成AIの開発競争が進んでいるため、開発自体は得意なところにお任せして、われわれも得意な部分で勝負していくべきと考えました。
得意な分野は何かと言えば、既存の製品やサービスに付加価値をつけてお客さまに提供する部分で、例えばロボットを動かすための通信やセキュアな環境づくりに関しては当社グループが展開しているインターネットインフラ商材が活用できます。われわれが持っている事業とAI・ロボット産業とは非常に相性が良いと思っています。
──ものづくりに関わろうという議論は社内で一切出なかったのでしょうか。
内田 そうですね、GMOでは2018年に仮想通貨のマイニングマシンを作ろうとしたのですが、最終的に353億円の特別損失を出して開発中止になった経緯があります。その苦い経験からも、ものづくりは自分たちの得意な領域ではないと分かったため、同じ失敗を繰り返さないためにもロボットを作ろうとは考えなかったです。
──6月18日の会社設立から1カ月以上経ちましたが、実際に事業をスタートしてみて反響はありますか。
内田 思っていた以上に期待されているという感触です。正直、これほど反響があるとは思っていなかったですし、今まで取引のなかった企業さまからの問い合わせも増え、ありがたいことに、連日さまざまな企業さまとお会いしています。
会社設立から約1カ月半で50件ほどの新規案件の打ち合わせを行いました。案件として多いのは、ロボットを使って何かやりたいがどうすれば良いかという相談に対して、われわれがソリューションを提供するという形です。ロボットメーカーはどうしてもプロダクトアウトの発想に寄りがちなので、そのプロダクトがどうすればお客さまに刺さるかという部分で、お手伝いさせていただいています。
例えば4足歩行ロボットを工場の点検作業に投入したとして、そこで得たデータをどう処理すれば良いか分からなければ、われわれの画像解析サービスを活用して、お客さまは解析した結果を見るだけでOKという形が実現できます。こうした例のほかにも、グループの既存事業が活用できる具体的な案件が複数出てきています。