写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ、ロイター/共同通信イメージズ

 ドライバーの時間外労働の上限が年間960時間に規制されてから4カ月が経過した。ドライバー不足以外にも、人件費や燃料費の上昇などさまざまな課題を抱える物流業界。そうした課題への対策として現在どのような取り組みが進んでいるのだろうか。

 物流メディア「ロジビズ・オンライン」編集長、『月刊ロジスティクス・ビジネス』副編集長の藤原秀行氏に聞いた。

物流会社だけではなく荷主側にも変化の兆し

――働き方改革関連法の改正により、トラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間に制限されることになってから4カ月が経過しました。物流業界の現状をどう見ていますか。

【月刊ロジスティクス・ビジネス】

2001年に創刊したロジスティクス管理の専門誌。 一般経済紙よりも深く、物流業界紙よりも広い視野から、独自のビジネス情報を発信。

藤原秀行氏(以下敬称略) ドライバー不足は依然として深刻な状態です。時間外労働の上限をオーバーしそうになったら他のドライバーを雇うことでカバーするなどの対策を講じなければいけません。ドライバーが確保できなければ、今後、長距離輸送の仕事などを減らさざるを得ないとういうような物流会社が出てくる可能性もあるでしょう。すでにドライバーの負担が大きい仕事は受けないという会社は現れています。

 一方で荷主側も、物流会社が運びやすい環境を整えていこうと考えるようになってきています。例えば特殊な形状で運びにくい荷物を運びやすい形状に変えるとか、重い荷物をいくつかに分けて軽くするといったことです。生産体制から見直さなくてはならない場合もあります。どこに工場を置き、どこに物流センターを配して、どういうルートで運ぶか、サプライチェーンを抜本的に見直している荷主もあります。

――物流業界の再編につながる可能性は?

藤原 動きは出ています。今年に入ってからも、大手の物流会社が中小の物流会社を買収する、優良顧客がついている物流会社を買収して基盤を強化する、メーカーが物流子会社を物流会社に売却するなどのケースが相次いでいます。

増え始めた共同物流の取り組み

――時間外労働時間の規制が強化されてドライバーの奪い合いになり、賃金が上がって物流会社の経営が圧迫されるということはありませんか。

藤原 実はコロナが明ければ経済活動が活発化し、物の動きも活発になると想定されていましたが、最近は物価の上昇が個人消費に影響していることなどから、そうでもないという声が業界内外から聞こえてきます。

 物流会社としては、賃上げしたくてもなかなかできないというのが実情のようです。もちろんドライバーの賃金はこれまで安すぎた面があるので、改善しなければいけないという意識は強く、賃上げしようという動きが次第に顕在化しています。

――ドライバー不足による輸送効率の低下に、物流会社や荷主はどう対応していますか。

藤原 一つの方法が共同物流です。別々の企業が同じトラックに荷物を積んで運ぶとか、行きと帰りで別の荷主の荷物を積むといった取り組みはもう始まっています。

 共同物流に取り組んでいる企業の一つに、2019年に発足したF-LINEがあります。味の素、ハウス食品グループ本社、カゴメ、日清製粉ウェルナ、日清オイリオグループの5社が出資していて、それぞれの荷物を同じトラックに積んで運んでいます。