Fujita Office代表 元キユーピー上席執行役員 ロジスティクス、IT業務改革推進担当の藤田正美氏(撮影:宮崎訓幸)

 物流と地球社会を持続可能にするために、今何が必要なのか。デジタル先端技術から経営戦略まで、世の誤解・曲解・珍解を物流ジャーナリスト・菊田一郎氏が妄想力で切りさばく連載企画。

 今回は、キユーピーでロジスティクスとIT部門のリーダーとして改革を成功させたFujita Office代表の藤田正美氏をゲストに迎える。物流改革のきっかけと成功の秘訣とは?

キユーピーの物流・ロジスティクス改革/黎明期

菊田 今回のゲストには、Fujita Office代表でキユーピーにおいてロジスティクスとIT部門のリーダーとして両分野の大改革を成功に導いた藤田正美さんを迎えました。まずは藤田さん、キユーピーで推進した物流・ロジスティクス改革のきっかけは何だったのでしょうか。

藤田正美氏(以下・敬称略) 私が物流部門に配属されたのは1990年のことで、以来2020年まで30年間、物流・ロジスティクス部門に所属しました。1991年にバブル経済が崩壊し、多くのメーカー各社はコスト削減の大号令を発しました。

 前後して旧物流2法(貨物自動車運送事業法、貨物利用運送事業法)が制定され、運送業の参入障壁がほぼ撤廃されて事業者数が急増したものの、逆に荷物の量は減少し、長年月の供給過剰を招いてしまいました。

 そんな厳しい経営環境の中、キユーピーは2005年にグループ経営に舵を切りました。2006年から新体制になったのですが、それ以前の物流部門は営業部門の傘下で、仕事は「営業支援」。組織体制や人材の面でも十分に整っているとは言えず、重要な役割を担いながらも、あまり注目されない部門でした。

 国内でも長年の間、物流の役割は十分に評価されているとは言い難い状況が続いていましたが、社内でも同様の傾向がありました。だからこそ、黎明期は「物流のプレゼンス向上」が大きなテーマで、一歩ずつ社内改革・機能強化を進めていきました。