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「2024年問題」への対応に追われる食品物流業界。2024年4月からのドライバーの時間外労働の上限規制や改善基準告示の適用が間近に迫る中、業界ではどのような動きが見られるのか。物流ジャーナリストのL-Tech Labの菊田一郎氏が、キユーソー流通システム社長の富田仁一氏に、食品物流のリアルな実態と持続可能な食品物流の実現に向けた取り組みについて尋ねた。

※本稿は、2024年1月24日に開催されたハコベル主催「2024年に持続不可能? 食品物流のサステナブル化に荷主と物流の連携を!」の内容を採録したものです。

労働環境の改善には発荷主・着荷主の協力が不可欠

菊田一郎/エルテックラボ 代表 物流ジャーナリスト

1982年、名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体理事等を兼務歴任。2020年6月に独立し現職。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスした著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。2017年6月より大田花き社外取締役、2020年6月より日本海事新聞社顧問(20年6月~23年5月)、同年後期より流通経済大学非常勤講師。21年1月よりハコベル顧問。 著書に『先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える』(白桃書房、共著)、『ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」』(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。

 物流の2024年問題が注目されるようになって久しいが、いよいよ2024年4月からドライバーの時間外労働・拘束時間の制限が強化されることになる。

「2022~2023年に物流需要が停滞したこともあって、荷主企業などの間では2024年問題に対する危機感が少し薄れてしまったかもしれません。しかし、ドライバーの時間外労働/拘束時間の短縮規制の対象となる2024年4月からは、いよいよ正念場を迎えます。ただし顕在化するタイミングはそれぞれ。4月―3月を事業年度としている事業者が対策を取らずに、2025年2月までに時間外労働の960時間を使い果たしてしまった場合、3月は年度末の繁忙期であるにもかかわらず稼働できないドライバーが続出し、輸送能力が不足する可能性があります」とL-Tech Labの菊田一郎氏は指摘する。

 こうして実際に2024年問題が表面化するのは2025年だとしても、「まだ猶予があるというのではなく、すぐにでもドライバーの労働時間をしっかりと管理する仕組みを作り、また時間を削減しても大丈夫な体制を整えておくことが必要でしょう」と菊田氏。

 そうした2024年問題について、食品物流・共同配送のパイオニアともいえるキユーソー流通システムの代表取締役社長、富田仁一氏は次のように語る。

「物流では慢性的な人手不足が続いているうえに、労働時間の上限が加わることで、このままでは安定輸送が困難になることは明らかです。『突発的な運行に対応できない』『繁忙期の車両手配が困難になる』などのさまざまなリスクが想定されます」

富田 仁一/キユーソー流通システム 代表取締役社長

1986年(昭61年)専修大法卒業、三英食品販売入社。1990年キユーピー入社。2017年コープ食品代表取締役社長に就任。2020年キユーソー エルプラン代表取締役社長、キユーソー流通システム取締役執行役員を経て、2024年2月より現職。

 富田氏は、2024年問題の根底にあるドライバーの働く環境の厳しさについての改善が急務だと訴える。

「ドライバーの働き方をめぐる環境は従来から非常に厳しく、労働時間は全産業平均より約2割長く、年間賃金は全産業平均より約1~2割低いと言われています。2024年4月以降は、時間外労働や拘束時間に上限が設けられることで、残業代が減り、さらなる賃金低下も予想されます。ドライバーの高齢化も止まりません。待遇の改善などの対策を図らなければ、成り手が急速に減少する恐れがあります」(富田氏)

 さらに、富田氏は続ける。

「物流の担い手の確保のためにも、ドライバーの給与は上げるべきだと考えています。また、給与だけでなく労働負荷の軽減など労働環境の改善も必要です。ただ、そうしたドライバーの労働負荷の軽減については、物流事業会社でできることには限界があります。物流の労働環境の改善には、発荷主様、着荷主様のご理解とお力添えが必要不可欠だと考えています」