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 物流と地球社会を持続可能にするために、今何が必要なのか。デジタル先端技術から経営戦略まで、世の誤解・曲解・珍解を物流ジャーナリスト・菊田一郎氏が妄想力で切りさばく連載企画。

 第1回では、輸送力不足が懸念される「物流の2024年問題」の盲点を明らかにした。第2回からは3回にわたって全産業の物流部門が講じるべき地球温暖化抑止対策を考える。その②となる今回は、破壊的な気候変動を食い止めるためのカギとなる、再生可能エネルギーへの転換の実現性について解説する。

<連載ラインアップ>
第1回 「2024年物流危機」は“2025年”に訪れる!~悪夢の年末・年度末
第2回 「炭素予算」が底をつく――全産業の物流部門が直視すべき地球の危機
■第3回 2050年排出ゼロへ、〈再エネ革命/RE100〉が生む巨大な安全保障/地政学的価値(本稿)


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化石資源の輸入費用は年約30兆円

 2022年、ロシアのウクライナ侵略によって世界のエネルギーサプライチェーンは大混乱に陥った。エネルギー価格が爆騰し、1年を終わってみれば我が国の鉱物性燃料*1の輸入額は、前年比98.1%増の約「33兆7000億円」と、前代未聞の数字となった*2。貿易赤字額は「20兆円超」。産業界は―もちろん物流分野でも―燃料価格と電気料金の高騰という地政学的危機由来の大波をかぶってしまった。それというのも日本のエネルギー自給率が13%(2021年)と、87%を輸入化石燃料に頼り切っていたからだ。

 2023年、エネルギー価格は落ち着きを見せたものの、鉱物性燃料の輸入額は約27兆3000億円*2と高止まり。貿易赤字が約9兆3000億円と半減したのは、輸送用機器の好調な輸出増(+30%)に打ち消されたからにすぎない。

 22/23年で平均して「約30兆円」が化石資源の輸入金額だ。ただしここには非エネルギー用途の石油化学製品に加工される原材料分が含まれ、輸入石油の約2割が洗剤・プラスチックなど化学製品の原料として使用されている*3。同様に削減すべきだが論点が異なるので、簡易計算で該当分の2年平均輸入額=約3兆円を差し引いて「27兆円」。これだけの輸入化石燃料が、夥しい温室効果ガス(GHG)を排出し続けていることを、私は問題にしている。

*1:原油及び粗油、石油製品、液化天然ガス、液化石油ガス、石炭。ここでは化石資源/化石燃料と総称し使い分ける。
*2:財務省貿易統計(確定値)。次年の数字は同(速報値)。
*3:一般財団法人日本エネルギー経済研究所 石油情報センターWEBサイトより。

 わが国2023年度当初国家予算の歳入総額は114兆3812億円。「27兆円」はその「約4分の1」。同予算で全国民が負担する消費税額23兆3840億円も、この額には及ばない。

・消費税収を上回る金額で私たちは毎年、化石燃料を買い、遠路はるばる輸入している
・それだけエネルギーを輸入し続けなければ、今の日本の産業と生活は普通に回らない

・・・この冷厳な事実を、私たちはもっと正視する必要がある。私はそう思う。

 前回の本コラムは、何をおいても第1に、「破壊的な気候変動を食い止めるために」物流に関わるすべての組織、人の脱炭素行動が今すぐ、必要であることを主張した。続いて脱炭素が不可欠な第2の理由として今回挙げるのが、以上のような地政学的リスクの回避、かつエネルギー安全保障の確立に、再生可能エネルギー(以下、再エネ)への革命的転換=〈再エネ革命〉が巨大な貢献をなす、という事実である。その前提として、〈再エネ革命〉の実現性について論拠を示さねばならない。