北海道全域で小売り事業などを展開する生活協同組合コープさっぽろは、10年間にわたり積極的に物流改革を進めてきた。その結果、現在では小売業としては全国でも数えるほどしか例のない物流の完全自前化を実現。改革をリードした大見英明理事長にこれまでの試行錯誤、物流の「2024年問題」への対応を聞いた。
英国テスコをベンチマーキングして行った改革
――コープさっぽろが物流改革に着手してから約10年が経過しました。そもそも物流改革を行うようになったのは、どういう経緯からですか。
大見英明氏(以下・敬称略) 当初の目的の一つはコスト削減でした。コープさっぽろは1998年に一度、事実上の経営破綻をしており、経営再建の過程で、物流は私どもの上部団体である日本生活協同組合連合会(日本生協連)が持つ物流子会社のシーエックスカーゴに委託していました。
ただ、私が常務に就任した2002年に、コープさっぽろ専用のリカーセンターを開設しました。札幌市大谷地に約800坪の自前の物流倉庫を持ったのですが、そこに北海道酒類販売(北酒販)の広域センターから毎日十数台のトラックが移動して商品を運んでいました。自社の拠点間で商品を輸送する、いわゆる横持物流のコストをどう削減するかという問題に直面し、とりあえず北酒販の広域センター内に私どもの物流センターを置くことでコスト削減をしました。
ただ、私はこのころから英国の小売業のテスコをベンチマーキングしていました。欧州と英国の関係は、本州と北海道との関係に地理的に似ているところがあり、ロンドンから全国に、札幌から全道へ一元的にものが流れている物流構造も似ています。そして英国の小売市場で30%近いシェアを持つこのテスコは自前の物流を持っているのです。そこで私はコープさっぽろも、いつか自前の物流を持つべきだと考えるようになったのです。
――2007年に理事長に就任されました。そこから物流改革が加速していったように見受けられます。
大見 理事長になってからは本部の関係部署や各部署は、コストセンターからプロフィットセンターになるべきだと言い続けていました。本当のスペシャリスト集団になれば、アウトソーシング企業と同じように専門性を活用し、外部から仕事を受託できるようになります。
もちろん物流部門についても、同様の考え方で見ていました。そのころニトリさんが物流部門を内製化するという話が聞こえてきたので、それを一つの典型例として学びながら自分たちも物流の自前化を進めていこうと考えたのです。
――日本では小売業が自前の物流を持つケースはあまりありません。自前の物流を持つというのは、大変なチャレンジだったのではないですか。
大見 おっしゃるとおり日本では、小売業は専門の物流事業者に物流を託すというのが常識でした。しかし、私たちはその常識を疑ったのです。実際、海外ではテスコをはじめ物流を自前化している小売業もたくさんあります。専門の物流事業者に委託するという常識は日本だけの常識で、むしろ海外ではそれが非常識だったのです。
日本ほど物流が細分化されている国もあまりありません。日本では卸業が先行して物流を構築してきたという歴史が300年以上続いてきたので、そういう構造になったと思われますが、それを世界の常識に組み替えようと私たちは考えました。