写真提供:生活協同組合コープさっぽろ、以下同

 北海道全域で小売り事業などを展開する生活協同組合コープさっぽろは、10年間にわたり積極的に物流改革を進めてきた。その結果、現在では小売業としては全国でも数えるほどしか例のない物流の完全自前化を実現。改革をリードした大見英明理事長にこれまでの試行錯誤、物流の「2024年問題」への対応を聞いた。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2023年12月8日)※内容は掲載当時のもの

英国テスコをベンチマーキングして行った改革

――コープさっぽろが物流改革に着手してから約10年が経過しました。そもそも物流改革を行うようになったのは、どういう経緯からですか。

大見 英明/生活協同組合コープさっぽろ理事長

愛知県出身、1982年北海道大学教育学部を卒業後、コープさっぽろに入協。1993年に核店舗であるルーシー店の支配人に。リニューアル本部長、水産部長、常勤理事商品本部長などの役職を経て、2007年に理事長に就任。2022年より小樽商科大学商学部特認教授も務める。

大見英明氏(以下・敬称略) 当初の目的の一つはコスト削減でした。コープさっぽろは1998年に一度、事実上の経営破綻をしており、経営再建の過程で、物流は私どもの上部団体である日本生活協同組合連合会(日本生協連)が持つ物流子会社のシーエックスカーゴに委託していました。

 ただ、私が常務に就任した2002年に、コープさっぽろ専用のリカーセンターを開設しました。札幌市大谷地に約800坪の自前の物流倉庫を持ったのですが、そこに北海道酒類販売(北酒販)の広域センターから毎日十数台のトラックが移動して商品を運んでいました。自社の拠点間で商品を輸送する、いわゆる横持物流のコストをどう削減するかという問題に直面し、とりあえず北酒販の広域センター内に私どもの物流センターを置くことでコスト削減をしました。

 ただ、私はこのころから英国の小売業のテスコをベンチマーキングしていました。欧州と英国の関係は、本州と北海道との関係に地理的に似ているところがあり、ロンドンから全国に、札幌から全道へ一元的にものが流れている物流構造も似ています。そして英国の小売市場で30%近いシェアを持つこのテスコは自前の物流を持っているのです。そこで私はコープさっぽろも、いつか自前の物流を持つべきだと考えるようになったのです。

――2007年に理事長に就任されました。そこから物流改革が加速していったように見受けられます。