日本各地に2万1488店(2023年12月末時点)を展開するセブン-イレブン。この日本ナンバーワンのコンビニチェーンでも“勝てない”コンビニが北海道にある。その名はセイコーマート。2023年12月末時点で道内店舗数はセブン-イレブン1001店に対し、セイコーマートは1091店(茨城県、埼玉県の店舗を含めると1187店)。1978年の北海道初出店以来、道内の店舗数でセブン-イレブンは常にセイコーマートの後塵を拝してきたが、これだけ長期間セブン-イレブンが後れをとっている地域は他にない。セイコーマートが北海道トップのコンビニでい続ける理由はどこにあるのか。
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セイコーマートを展開するセコマ(北海道札幌市、赤尾洋昭社長)。「セコマ」は北海道民がセイコーマートを呼ぶときの愛称で、セイコーマートだったチェーン本部の社名を2016年にこの愛称に変更している。
セコマの2022年12月期の業績は売上高2005億7751万円。出店地域は北海道内にある179の市町村のうち174におよぶ。出店地域の人口を合計すると522万人で、これは道内人口(523万人)の99.8%(数値は2021年1月1日時点)。北海道民のそばに必ずあるというのが、セイコーマートなのだ。
これは、セイコーマートが他のコンビニチェーンのように市場が豊かな特定の地域や都市部だけを選んで出店する方法をとっていないからだ。セイコーマートは札幌などの中心都市だけでなく、日本最北端の稚内市にも出店しているし、利尻島や礼文島といった離島にも出店する唯一のコンビニとなっている。
道内にくまなく展開する店舗網が食のライフラインとなっている
「購買データをみると、ひと月で売上げが高い日は年金支給日(15日)、生活保護支給日(1日)、給料日(25日)の順」とセコマの丸谷智保会長はいう。
セイコーマートの店舗数がセブン-イレブンを上回り、道内ナンバーワンコンビニであり続けるのは北海道が抱える社会課題に向き合ってきたからだ。そして、そのために北海道で誕生したチェーンならではの2つの強みを身に付けてきた。
1つ目の強みは、北海道内にくまなく展開する店舗網だ。これはもはや食のライフラインといえるものになっている。
セイコーマートの店舗網をカバーするように、セコマは道内各所に13カ所の物流センターと18カ所の製造工場を配置している(先述の稚内市や最東の地である根室市にもグループの製造工場がある)。
そして、配送は自社のグループで行っている。だから、店舗への納品を終えたトラックが帰途、自社グループの工場や農場に寄って商品や素材をピックアップ、それを積載することで配送効率を高めることができる。
北海道の人口は1997年の569.9万人をピークに減少を続け、2023年は514.0万人(1月1日時点)となっている。人口減、高齢化が全国平均より10年早く進んでいるといわれる北海道は日本が抱える社会課題を先取りしている。人口が減ると消費は全体的に減るが、高齢化はこれを加速させるし、働き手不足という課題ももたらす。
そこで、セコマでは店舗段階だけでなく、配送段階でも収益を確保する仕組みを構築している。