「SPA(製造小売業)からIT小売業へ」。ホームセンター業界の先頭を走るカインズを表現するとこうした表現がぴったりくる。市場全体では頭打ちといえるホームセンター業界で成長を続けるカインズの独自性と、今後の戦略を紹介する。

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カインズが今後もホームセンター業界のトップを走り続けそうな理由(本稿)

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 カインズ(埼玉県本庄市、高家正行社長)は北関東を拠点に28都道府県に234店舗を展開するホームセンターチェーンだ。2023年2月期の年商は5158億円。これはホームセンター業界の売上高ランキングではトップだ(下の図)。

 しかし、注目したいのはその店舗数。図の8チェーンの中で店舗数では7番目となる。カインズは他チェーンよりも店舗数が少ないのに年商は多い。つまり、1店舗当たりの販売効率が極めて高いのだ。カインズの年商を店舗数で割ると1店舗当たりの売上は22億円となる。

 下の図は経済産業省の商業動態統計でみた過去5年間のホームセンターの売上高と店舗数の推移だ。

 2020年度に売上高が伸びたのは新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、「巣ごもり消費」で除菌関連、マスク、園芸用品、インテリア関連などの需要が高まったため。こうした特殊事情を除くと、業界の売上規模は概ね3兆3000億円台で推移している。

 店舗数は2018年度の4338店舗から2022年度は4440店舗へと微増。こうした中、同期間にカインズは店舗数を219店から234店に6.8%増やし、年商を4214億円から5158億円へと22.4%も伸ばしている。