写真提供:大和ハウス工業

 大和ハウス工業が千葉県流山市で建設を進めてきた大型物流施設プロジェクト「DPL流山プロジェクト」が、2023年4月に完成した。全4棟、延床面積は東京ドーム15個分に達する巨大な物流施設群だ。この施設は、出入りするトラックドライバー、施設内で働くワーカー、そして地域住民をサポートするさまざまな機能を備え、物流の2024年問題への1つの解決策を示す。プロジェクトの責任者にその全貌を聞いた。

<連載ラインアップ>
■第1回 荷主も社会も協力を、NX総研・大島氏が語る「物流の2024年問題」の乗り越え方
■第2回 2024年問題解決に寄与、荷役時間を短縮させる大和ハウス工業の巨大物流施設(本稿)
■第3回 「完全自前化」でアマゾンに勝つ、コープさっぽろ大見理事長が語る物流改革
■第4回  ビッグデータ分析、AIで経営改善、DX戦略担当者が語るSGHDの物流改革
■第5回 AGVとロボットで無人化を実現、花王「次世代倉庫」の全貌(仮題)
■第6回 企業の垣根と物流の常識を超える、日清食品のサプライチェーン改革(仮題)


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物流施設事業は大和ハウス工業のルーツ

──ネット通販の急増などでトラック輸送が拡大しています。大和ハウス工業(以下・大和ハウス)の物流施設も、あちこちで見かけるようになりました。

村上 泰規/大和ハウス工業 東京本店 建築事業部 事業部長

2001年大和ハウス工業入社。青森支店で商業施設や物流施設の開発に携わり、2007年より東京本店建築事業部に異動。数多くの物流施設の開発を手がける。2023年4月より現職。

村上泰規氏(以下・敬称略) おっしゃるとおり、物流施設の需要は急増しています。ただ、当社は市場が拡大したから物流の事業に参入したわけではありません。

 じつは大和ハウスの祖業は、旧国鉄の駅や線路の保守に使うスコップなどの道具を保管する小屋を作る仕事からスタートしています。以来、卸売業や運送会社などの倉庫を作り続けてきました。この倉庫建築で培った技術を、住宅事業などに派生させ、現在の事業ポートフォリオを築いてきたのが当社の歴史です。

 不動産証券化によって外資の投資が急拡大したことで、2000年を越えるころから、物流施設の建設が急増しました。当社は長年のノウハウを生かしてその波に乗り、国内物流施設の延床面積では業界1位となっています。現在、事業用施設の建設は、当社の主力事業の1つです。

 大型の物流施設市場は、BTSと呼ばれる特定の企業1社が利用する専用のものから、徐々に1棟の建物内に複数企業が入る「マルチテナント型」の需要が高まり、当社もそれに対応して多く手がけるようになっています。

広大な空間、スケジュールアプリ活用で荷物の積み降ろしをスムーズに

──物流業界は、法改正によりドライバーの長時間労働が制限され、輸送力が不足し、荷物が運べなくなる可能性が生じるとされる「2024年問題」に直面しています。どう見ていますか。

村上 労働基準法が改正された2019年から、2024年には物流業界も規制対象になることはわかっていました。しかし業界全体として、対策は遅れています。

 その理由はいくつかあります。1つは2024年問題によってどのような影響があるか、具体像が見えていなかったこと、もう1つは、対策には投資が必要だということです。物流事業者、3PL各社も、限られた予算で事業を進めてきたなかで、2024年問題に対応する投資は後手に回ってきたのではないかと想像しています。

 当社のような施設のデベロッパーができることは、物流全体のバリューチェーンの中で、労働時間の短縮や働く機会の提供など、人にかかわる領域に積極的に投資することです。当社の拠点を活用してもらうことで、物流業界の一員としての責任を果たしたいと思います。

 その具体例の1つが、当社が千葉県流山市に建設した大型物流施設プロジェクトの「DPL流山プロジェクト」です。