花王は生活用品メーカーでありながら、物流対策で常に先端を走ってきた。2023年3月には豊橋工場に新倉庫を建設し、生産・物流が一体となった体制を整え、独自の物流モデル「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」を推進中だ。新たな物流体制を構築する狙いは何か。新倉庫は物流が抱える社会課題の解決にどう寄与するのか。新倉庫プロジェクトのプロジェクトマネージャーを務める田坂晃一氏に話を聞いた。2ページ目では、無人搬送車(AGV)とロボットが完全自動で稼働する様子を、動画でお伝えする。
新倉庫の建設は「パーパス実現」のため
——豊橋工場に建設された次世代新倉庫の運用が2023年3月より始まりました。新倉庫を設けることになった経緯や狙いを教えてください。
田坂晃一氏(以下、敬称略) 豊橋工場の見直しや新倉庫の建設は、当社のパーパス実現に向け、以前から検討を進めていた取り組みの一環です。
当社には工場が全国に10カ所あり、工場ごとにさまざまな製品を製造して全国に配送しています。豊橋工場では「ニベア」や「ビオレ」などスキンケア製品を中心に製造していますが、こうした少量多品種の製品の生産量が伸びています。豊橋工場での生産能力の強化に合わせて、ロジスティクス領域での能力の確保が必要となっていました。そこで、生活者を起点とした豊橋工場の在り方やビジョンを検討し、生活者、豊橋工場、関係者が最適につながりフレキシブルに供給する「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」を策定しました。そのビジョンを実現するために、2019年に各部署から20~30代の若手社員を中心とした新倉庫の建築プロジェクトを発足し、本格的な検討を始めました。
花王グループは「豊かな共生世界の実現」をパーパスに、2019年にESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を策定しています。新倉庫の建設は、このESG戦略にもとづいた、人と社会と地球にやさしい持続可能なサプライチェーンの構築を目指した取り組みです。新しく倉庫を建てるなら、当社が目指す持続可能な社会の実現に向けて、CO2削減など環境への配慮、倉庫で働く人の負担軽減、サプライチェーンの最適化などは当然考えるべきです。新倉庫ではそうした要件をすべて考慮して、対策を施しています。
——なぜ、物流業務について積極的に確立する必要があるのでしょうか。