![](https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/4/f/1200mw/img_4f95cf5c3a1c6a4ff6c425900123d43e530179.jpg)
花王は生活用品メーカーでありながら、物流対策で常に先端を走ってきた。2023年3月には豊橋工場に新倉庫を建設し、生産・物流が一体となった体制を整え、独自の物流モデル「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」を推進中だ。新たな物流体制を構築する狙いは何か。新倉庫は物流が抱える社会課題の解決にどう寄与するのか。新倉庫プロジェクトのプロジェクトマネージャーを務める田坂晃一氏に話を聞いた。2ページ目では、無人搬送車(AGV)とロボットが完全自動で稼働する様子を、動画でお伝えする。
新倉庫の建設は「パーパス実現」のため
——豊橋工場に建設された次世代新倉庫の運用が2023年3月より始まりました。新倉庫を設けることになった経緯や狙いを教えてください。
![](https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/0/f/600mw/img_0f5de02ea3a064b9948ab970a7484273358253.jpg)
2007年花王に入社。ロジスティクス部門にて国内物流拠点の生産性向上のためのシステム開発などに取り組む。2017年7月経済産業省商務・サービスグループ物流企画室に出向し、日本の物流政策の立案・実行に従事。2019年7月に帰任し、ロジスティクスセンターにて国内の物流拠点政策を担当。2021年7月にデジタルイノベーションプロジェクトの発足と同時に、チーフデータサイエンティストに就任。サプライチェーン全体の最適化や高度化を図るDXを推進中。
田坂晃一氏(以下、敬称略) 豊橋工場の見直しや新倉庫の建設は、当社のパーパス実現に向け、以前から検討を進めていた取り組みの一環です。
当社には工場が全国に10カ所あり、工場ごとにさまざまな製品を製造して全国に配送しています。豊橋工場では「ニベア」や「ビオレ」などスキンケア製品を中心に製造していますが、こうした少量多品種の製品の生産量が伸びています。豊橋工場での生産能力の強化に合わせて、ロジスティクス領域での能力の確保が必要となっていました。そこで、生活者を起点とした豊橋工場の在り方やビジョンを検討し、生活者、豊橋工場、関係者が最適につながりフレキシブルに供給する「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」を策定しました。そのビジョンを実現するために、2019年に各部署から20~30代の若手社員を中心とした新倉庫の建築プロジェクトを発足し、本格的な検討を始めました。
花王グループは「豊かな共生世界の実現」をパーパスに、2019年にESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を策定しています。新倉庫の建設は、このESG戦略にもとづいた、人と社会と地球にやさしい持続可能なサプライチェーンの構築を目指した取り組みです。新しく倉庫を建てるなら、当社が目指す持続可能な社会の実現に向けて、CO2削減など環境への配慮、倉庫で働く人の負担軽減、サプライチェーンの最適化などは当然考えるべきです。新倉庫ではそうした要件をすべて考慮して、対策を施しています。
![](https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/4/d/1200mw/img_4dcd94306cb8a87b8e3627533649a2fe2789698.jpg)
——なぜ、物流業務について積極的に確立する必要があるのでしょうか。
田坂 日用雑貨品は単価のそれほど高くない製品が多く、製品の原価率に占める物流費の比率が高くなるため、このコストをいかに抑えるかが非常に重要です。私が入社する前から、花王の先人たちが物流拠点の在庫設計や供給システムを構築することで、輸送や保管効率を上げる活動に力を入れてきました。ですから物流業務を含めたサプライチェーンの最適化は、今に始まったことではなく、かなり早い段階から独自に取り組んできたことなのです。サプライチェーン全体の設計、効率化を行う中で物流に関するところも自分たちで設計し運用していくことで効率的な物流活動も行ってきました。