物流と地球社会を持続可能にするために、今何が必要なのか。デジタル先端技術から経営戦略まで、世の誤解・曲解・珍解を物流ジャーナリスト・菊田一郎氏が妄想力で切りさばく連載企画。
第12回からは4回にわたり、日清食品常務取締役事業統括本部長兼Well-being推進部長で、フィジカルインターネットセンターの理事を務める深井雅裕氏を迎えた特別対談をお届する。第13回ではCLO(最高ロジスティクス責任者)に求められる「3つの役割」について語り合う。
物流・ロジスティクスは経営戦略の1つ
菊田 前回の話のように日清食品では今回の法律(「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(物流総合効率化法/物効法)」と「貨物自動車運送事業法」)が改正される以前に、サプライチェーン視点・全体最適視点での物流改革を進展してきました。時間軸ではその後に、「物流統括管理者」の設置義務付けや「CLO (Chief Logistics Officer、最高ロジスティクス責任者)」の話が出てきた形になります。
深井雅裕氏(以下・敬称略) CLO、最高ロジスティクス責任者という役務がオーソライズ(公認)されるとしたら、当社としてはもう願ったりかなったりです。まさにそうした機能の確立に努めてきたわけですから。
実は当社の海外法人の組織状況を調べたところ、以前から当然のように、経営会議でサプライチェーンや物流を全体最適視点でキッチリ議論していたことが分かったんです。ある子会社では副社長がサプライチェーンを担当し、経営戦略の1つと位置付けてスピード感のある判断で進めていました。
ところが、日本法人はそうなっていなかった。産業構造の違いや歴史的な背景もあると思いますが、欧米の考え方は合理的だと感心しました。欧米企業では物流系出身の経営者も多いようですね。
菊田 その通りで、物流畑では古くからウォルマート、P&G、アップル、ゼロックス等の例が知られています。