「チキンラーメン」「カップヌードル」「完全メシ」・・・加工食品業界において常に革新を繰り返してきた日清食品は、物流においても一歩先を進んでいる。他社との共同輸送によるトラックやコストの削減やフィジカルインターネットに積極的に取り組み、2026年稼働予定の新工場でも、それらの活用を前提としている。個社ではなく他社と共同でSCM(サプライチェーンマネジメント)の最適化と物流の「2024年問題」解決に挑む同社の取り組みを、サプライチェーン本部長の深井雅裕氏に聞いた。
未経験だからこそ思えた「物流には伸びしろがある」
——日清食品は、共同輸送に早い段階から取り組んでいます。きっかけは何だったのでしょうか。
深井雅裕氏(以下・敬称略) 物流構造改革の部署を立ち上げたのが2019年ですが、私はそれまで営業戦略部に所属していて物流については全くの素人でした。ですから事業を始める前にメーカーや物流事業者、行政や大学の先生などにお話を聞きに行きました。
その時にみなさんからトラック積載率が低い、付帯作業が多い、荷待ち時間が長いなどの課題を聞き、これはもう個社でやれることには限界があるなと感じました。
例えば当社では6月と12月では荷量が全く違います。6月が少なくて、最需要期の12月は6月の約2倍の量になります。そのため、12月に向けて9月頃から製品をつくり倉庫で保管するのですが、保管しておくといっても、倉庫は年間契約です。必要な時だけ、という形では借りられないので、夏場に倉庫が余ることになります。トラックでも倉庫と同じ現象が起きますから、これはどうにかしないといけないと考えていたところ、アサヒ飲料様が一緒にやろうと言ってくださいました。
——物流の世界に入って、サプライチェーンの現状をどう感じましたか。
深井 私だけでなく当初の物流構造改革の部署のメンバーは、ほぼ全員が物流未経験。素人だからこそ気づくことのできる改善点がたくさんあり、物流は伸びしろだらけだと感じました。
例えば、アサヒ飲料様との共同輸送は、違うサイズのパレットを混載させるという従来になかった仕組みをつくり、トラックの使用台数を20%削減しましたが、これは私たちが物流の素人だったからこそ挑戦できたのだと思います。
また、2022年にはサッポログループ物流様と食品と飲料の共同輸送で協力しました。行きは両社の製品を積んで、帰りは空いた容器やパレットを運ぶラウンド輸送です。
また2023年には、全国農業協同組合連合会(JA全農)様と、製品および当社製品の原材料でもある米穀の組み合わせで共同輸送を決めました。原材料を工場に運んできたトラックを空車で帰してしまうのではなく、そのトラックに工場で生産した当社の製品を詰め込んで運ぶと無駄がないのでは、と考えJA全農様と連携を開始することにしたのです。個社での最適化ではなく、他社との連携に目が向いたのも素人だからこそだと思います。