ライフコーポレーション(以下、ライフ)社長で、日本スーパーマーケット協会(以下、JSA)の会長も兼務する岩崎高治氏は、年収が103万円を超えると所得税が課税される「103万円の壁」を解消すべきだと主張する。人手不足が深刻化する中、これが存続するとスーパーマーケット業界はどんな事態に陥るのか。岩崎氏に聞いた。(後編/全2回)
103万円の壁が存続すると1店あたり50 人の新規採用が必要?
──JSAはスーパーマーケットの就労調整の実態調査を行い、約80%のパートタイム労働者が「103万円の壁」を意識して勤務していることを明らかにしました。これだけ多くのパートタイム労働者が、税と社会保険の負担を軽減するために働き控えすると、人手不足はより深刻化しますね。
岩崎高治氏(以下敬称略) 人手がどれだけ不足するか、計算してみましょう。今後物価が上がり、最低賃金が1500円程度になると、お店を運営するためには50人新規に採用する必要が出てきます。
例えば、1店舗あたり200人のパートタイマーさんが働いていて、そのうち約半分の100人程度のパートタイム労働者が「103万円の壁」を意識し、1週間に約20時間働いているとします。
パートタイム労働者の平均賃金を時給1000円程度と仮定すると、年間の労働時間は1030時間程度。将来最低賃金が1500円になり、103万円の壁が存続したままであれば、一人当たり労働時間は687時間まで減少します。
そうなった時、減ってしまった343時間×100人分は、他の人員で埋め合わせなければならないのです。3万4300時間を埋めるために必要な人員数は、約50人(一人当たり687時間)ということになります。
物価高が進行し、最低賃金を引き上げる中で、これまでと同じように食品スーパーを運営していくことの難しさが分かるのではないでしょうか。