西武ホールディングス代表取締役社長 社長執行役員兼COOの西山隆一郎氏(撮影:内海裕之)

 コロナ禍の行動制限などで受けた打撃から回復途上にある西武ホールディングス。2023年4月に同社のトップに就任した西山隆一郎社長は、ホテルや鉄道事業に加え、不動産事業を大きな柱と位置づけて西武グループの再成長に挑む。今後どのような舵取りをしていくのか、西山社長に話を聞いた。

未曾有のコロナ禍で崩壊した鉄道・ホテル事業

――コロナ禍に鉄道事業をはじめ大きな打撃を受けましたが、どのような状況でしたか。

西山 隆一郎/西武ホールディングス代表取締役社長 社長執行役員兼COO

1964年神奈川県横浜市出身。1987年横浜国立大学経済学部を卒業後、第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行。2003年みずほホールディングス広報部参事役に就任。2009年西武ホールディングスに入社し、総合企画本部広報室長就任。以降は西武ホールディングス、西武鉄道両社で広報部長を兼任し、米投資ファンドによるTOBなど有事の際の広報活動をリード。2017年には西武ホールディングス上席執行役員として管理部も担当。加えてプリンスホテル(当時)取締役常務執行役員として、管理部・広報部・フロンティアビジネス事業部の担当役員を兼任。2021年からは西武ホールディングスにて経営企画本部長に就任し、コロナ禍を乗り越えるべく策定した中期経営計画を遂行し、事業構造の大きな転換を図る改革に邁進。2023年4月1日より西武ホールディングス代表取締役社長 社長執行役員兼COOに就任した。
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好きな言葉:前進
尊敬する経営者:ダヴ・シードマン(アメリカの経営者・作家)
愛読書:『HOW』(ダヴ・シードマン著)

西山隆一郎氏(以下敬称略) 2021年5月に3月期の決算発表をしましたが、コロナ禍の影響を最も受けた決算期ということもあり、当期純損益で723億円の赤字に沈みました。それまでは、景気変動などでホテル事業が落ち込んだ場合でも、安定した鉄道事業が補う構図でしたが、コロナ禍では人流制限のなか、ホテル、鉄道両事業とも崩壊してしまったわけです。

 どん底に陥った経営を回復させるため、事業構造を抜本的に変えています。その最たる例が、運営と保有のスタイルから運営特化型に変えたホテル事業です。26ホテルをシンガポールの政府系投資ファンドのGICに流動化しました。さらに、不動産事業もグループ各社が保有する不動産を可能な範囲で1社に集約しています。

 また、プリンスホテルは西武・プリンスホテルズワールドワイド、不動産事業を受け持つ西武プロパティーズは西武リアルティソリューションズと、それぞれ社名まで変えて改革の意思を社内外に示しました。

 社内の事業構造を大きく見直す“外科手術”をして、塗炭の苦しみから改革に踏み切り、ようやく現在の回復途上に至っているわけです。

――2024年4月からは新中期経営計画も始動します。まだ詳細については議論の最中かと思いますが、どのような変革に挑まれるイメージでしょうか。

西山 足下の決算数字は順調に回復してきていますが、来年4月からは「夜が明けて新たな姿で本当のスタートに立つ」という考えで、新しい中期計画の内容を開示する予定です。

 西武グループには全国に約1億m2を超える土地の保有資産がありますので、不動産事業を一つのプラットフォームにして、ホテル事業と鉄道事業がコラボレーションして次なる成長戦略を描いていきたいと考えています。

――ホテル、鉄道の両事業が落ち込んだなか、何とか底支えしたのが不動産事業でした。

西山 はい、コロナ禍で唯一黒字だったのが不動産セグメントです。たとえば、2016年に開業した東京ガーデンテラス紀尾井町。この敷地には以前、715室を擁するグランドプリンスホテル赤坂がありましたが、総事業費約1000億円をかけ、オフィス、レジデンス、商業施設、プラス上層階に250室のラグジュアリーホテル「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」を配置し、大型の複合再開発ビルに生まれ変わりました。レジデンスや商業施設などからの安定収入があったおかげで底支えができたのです。

東京ガーデンテラス紀尾井町