長年、日本の清涼飲料販売シェアで首位を維持してきた米国発のグローバルブランド、コカ・コーラ。その最大手ボトラーであるコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは今年8月、新たな中期経営計画を発表した。同社はどのような成長戦略を描き、飲料業界にどんな変革をもたらそうとしているのか。そこで同社のカリン・ドラガン社長(事業会社のコカ・コーラボトラーズジャパン代表取締役社長 最高経営責任者)に、中期計画策定過程の議論や今後の戦略方針などについて話を聞いた。
進むボトラーの経営統合、経営資源の選択と集中
――8月に、2024年から2028年までの中期経営計画「Vision 2028」を発表されました。その中で、2024年に黒字転換し、計画最終年に事業利益450億円以上を目標に掲げていますが、中期計画策定の過程でどのような議論があったのでしょうか。
カリン・ドラガン氏(以下敬称略) 我々は4年前の2019年8月も中期経営計画を公表しておりますが、その2年前の2017年にコカ・コーラウエスト、コカ・コーライーストジャパン、四国コカ・コーラボトリング等が経営統合し、長年の課題だった複数のボトラーが1社にまとまりました。それまでは12のボトラーがあって、さらに各ボトラーが傘下に多くの子会社を置き、バラバラに運営している状況だったのです。
それが2017年の統合で、多くの合理化効果や事業のシナジー効果を生み、コカ・コーラ ボトラーズジャパンとして好スタートを切ることができたわけです。実際、2020年1月からの第1四半期(決算期は12月)までは事業もうまくいっておりましたが、その後、コロナウイルスのパンデミックが起こり、暗転してしまいました。コロナ禍の打撃は非常に大きく、2020年は結果的に米ドル換算で約10億ドルの売上高を失ってしまいました。
しかし、コロナ禍の約3年、このような時期だからこそ逆に変革をより強力に推進していこうと考え、結果的に総額300億円のコスト削減が実現できました。青汁などを手がけていたグループ企業は売却しましたし、他にもあまり使われていなかった土地や倉庫など、ノンコア資産の売却も行いました。
その一方で、埼玉工場と明石工場(兵庫県)では新たに大型の自動物流倉庫をオープンさせるなど、デジタル化投資などは積極的に行っています。
――現在、コカ・コーラボトラーズジャパン以外に国内のボトラーは何社残っているのでしょうか。
ドラガン 現在、コカ・コーラボトラーズジャパン以外では、上場会社の北海道コカ・コーラボトリングと、みちのく、北陸、沖縄の計4社のボトリング企業が残っていますが、コカ・コーラボトラーズジャパンだけで、日本のコカ・コーラ事業の販売数量のうち約90%のシェアを占めています。
日本でコカ・コーラのビジネスが始動した当初は、17ものボトラーが存在していました。海外の国でも多くのボトラーがありましたが、日本よりも早い時期にボトラー同士の経営統合が行われたのです。私は30年前の1993年、コカ・コーラレバンティスに入社し欧州で仕事をしていましたが、手がけたプロジェクトの1つがボトラーの経営統合でした。
私が日本のコカ・コーラボトラーに来たのは2011年のことで、そこでも大きなミッションの1つがボトラーの経営統合を推進することだったのです。当初あった17のボトラーには醸造会社やそのエリアの卸会社、あるいは財閥系の商社などが資本の出し手としていたのですが、次第にノンコア事業ということで保有株式を売却していきました。
その後、大きなボトラーとしてコカ・コーラウエストとコカ・コーライーストジャパンに再編され、さらに2017年にこの2社が統合したわけです。