「札幌」「恵比寿」がブランド価値の源泉
1876年、北海道・札幌に開拓使麦酒醸造所が設立されたのがルーツのサッポロビール。同社を中核とするサッポログループの経営理念は、「潤いを創造し 豊かさに貢献する」。酒類メーカーらしい理念といえるが、ここには同社のWell-being(ウェルビーイング)に対する考え方が包含されている。尾賀真城・サッポロホールディングス社長がこう補足する。
「単においしいビールを提供して、人々の人生に潤いを与える物の豊かさだけでなく、『自然の豊かさ』『社会の豊かさ』『心の豊かさ』という3つの豊かさを実現し、人々と地域社会のウェルビーイングに貢献したいという思いを込めています」
そのためにサッポログループが常に意識しているのが、「個性かがやくブランド」の追求である。個性を際立たせることが同グループのブランドや存在価値をより高めていくことにもつながるからだ。では、サッポロの他社にはない独自価値とはどんなものなのか。
「『サッポロ』と『ヱビス』という二つの地域名を冠したブランドがベースになっている点が大きな価値だと思います。たとえば『サッポロラガービール』のラベルには、“JAPAN’S OLDEST BRAND”と刻印されていますが、我々は現存する日本で最も古いビールメーカーとして明治時代から信頼を築いてきました。もちろん同業他社の歴史も古く、アサヒビールさんなら大阪、キリンビールさんなら横浜がそれぞれ発祥の地であるのに対し、我々は北海道の札幌と東京の恵比寿、双方を起点に事業活動を展開してきたという特徴があります」(尾賀氏)
地域とのつながりは、酒類・飲料ビジネスだけにとどまらない。1994年に開業した恵比寿ガーデンプレイスに代表される不動産ビジネスも同社の経営を支える大事な柱に成長している。東京・恵比寿は1988年までサッポロビールの恵比寿工場として稼働していた土地だが、いまでは一般的となった、オフィス、商業施設、ホテル、レジデンスで構成される複合再開発の先駆けといってもいい。
「不動産事業といっても住宅の販売や賃貸を行っているわけではなく、まちづくりを通じてお客さまとの接点を増やしたいというところからスタートしました。もともと恵比寿もビール工場があった土地なので、まちとブランドの共栄という観点から再開発事業を手がけてきました。実は『ヱビスビール』は先に商品の存在があり、そこから恵比寿というまちの名前が付いたくらい価値の源泉といえる土地なのです」(尾賀氏)