アサヒグループでは「おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」を長期戦略のコンセプトとし、持続的成長を実現するためのコア戦略の一つとしてDX戦略を位置付けている。このグループ戦略の下、コンセプト実現に向けて日本統括会社のアサヒグループジャパンがDXの取り組みを進めている。DX=BX(ビジネストランスフォーメーション)と捉えイノベーションを推進するアサヒグループの取り組みを、アサヒグループジャパン DX統括部長の山川知一氏が紹介する。

※本コンテンツは、2022年5月26日に開催されたJBpress/JBpress Digital Innovation Review(JDIR)主催「第2回 経営企画イノベーション」Day2の特別講演Ⅰ「アサヒらしくを、あたらしく「Digitalでもっとわくわくする明日を」の内容を採録したものです。

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国内事業の再強化を目指し、アサヒグループジャパン発足

 アサヒグループの会社数は211社、従業員数は連結で約3万名です。グループを取りまとめているのがアサヒグループホールディングスで、本社は東京墨田区にあります。グループの売上高は2021年12月期で約2.2兆円、事業利益は2000億円といった規模です。

 私の所属しているアサヒグループジャパンは、日本の国内事業を統括する会社として、シナジーの創出や事業横断での価値創造を目的として、2022年1月に発足しました。

 アサヒグループのDX戦略では、DX=BXとし、DXを推進することはBXを推進していくことであると定義しています。私が部長を務めるアサヒグループジャパンDX統括部でも、「さらなる成長を実現する基盤やオペレーション改革を起こすための仕掛け、仕組みを整える」ことをミッションとしています。それぞれの取り組みが単独で行われるのではなく、日本事業の全体像、それぞれのシステム、サービスのつながり、順番などを意識しながら組み上げていくところに責任を持って活動をしています。

 日本事業の経営方針について紹介します。まず、アサヒグループの長期戦略コンセプトとして、「おいしさと楽しさで”変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」を掲げています。これを受け、日本事業の戦略コンセプトとして、「生活者起点でニーズ・変化を先取りし、One Asahiで次代の価値創造による成長、社会との共生を実現する」ことを目指します。

 キーワードは「生活者起点」です。これまでは、各事業会社、カテゴリーごとに独立して事業を展開してきました。これからは、起点を生活者に置くとともに、価値提供をOne Asahiとして行っていきます。いわば個人戦を行っていたフェーズから、いよいよ団体戦で、日本事業全体として価値提供を行うフェーズに変わっていこうとしているのです。

 その実現のために、3つの戦略の柱と10の優先施策を行っていきます。戦略の3つの柱は「成長」「コスト」「サステナビリティ」です。この3つの戦略を支えるのが10の優先施策であり、「成長戦略」を支えるものとして「生活者起点での成長機会の探索と開発」「ブランドポートフォリオ最適化」「顧客マネジメント」の施策。「コスト戦略」においては「調達機能の統合」「S&OP(セールス&オペレーション・プランニング)強化」「販売費・一般管理費のスリム化」などの施策。「サステナビリティ戦略」においては、「サステナビリティの事業価値への反映」「ニュートラル化でのリーダーシップ」などの施策。また、コスト戦略とサステナビリティ戦略をまたぐ形での「生産・物流ネットワーク再編」という施策も行います。さらに、それら全体を支える施策として「人材のリスキリング」「IT基盤強化とDXの推進」などの施策にも取り組みます。

 それぞれの優先施策を行うにあたって非常に重要なのがデータです。データに基づいてそれぞれの優先施策を実行していきます。DX統括部にはデータを実際に使う人のスキルアップや実際にデータを使う基盤の整備が求められます。