創業以来変わらないモスグループの原点とは?
ハンバーガーチェーン大手のモスフードサービスは1972年に創業、昨年が50周年だったが、その頃から、創業者の甥にあたる櫻田厚会長はある思いを強くしていたという。
「節目の年に際して、これから先の50年も企業文化を風化させてはいけないという問題意識がすごくありました。当社では経営理念、創業の心、基本方針、経営ビジョンの4層の指針から構成する“モスの心”を定めているのですが、リーダーが範を示し続けていかなければ形骸化してしまいますから」
“モスの心”は、まず「人間貢献・社会貢献」を経営理念とし、「感謝される仕事をしよう」が創業の心で、「食を通じて人を幸せにすること」を経営ビジョンと定めている。そして時代がどのように変化しようとも、モスフードサービスの役員、幹部、社員にとどまらず、店舗スタッフも含めて共有すべきものが基本方針だ。
同方針では、「お店全体が善意に満ちあふれ 誰に接しても親切で優しく 明るく朗らかでキビキビした行動 清潔な店と人柄 そういうお店でありたい 『心のやすらぎ』 『ほのぼのとした暖かさ』を感じて頂くために努力しよう」という指針が示されている。
また、MOSはMOUNTAIN(山)、OCEAN(海)、SUN(太陽)の頭文字から取ったもので、創業者の櫻田慧氏(故人)は、「山のように気高く堂々と、海のように深く広い心で、太陽のように燃え尽きることのない情熱を持って」という思いを込めて名付けたという。
「“モスの心”は、どんな時も人への感謝の気持ちを忘れないことを基本に、人として誠実さや素直さ、謙虚さや優しさ、暖かさを併せ持つということ。そこが如実に表れるのが一店一店のお店です。たとえばお客さまが『モスは他のハンバーガーチェーン以上に暖かみを感じる』とおっしゃるのは、お店のスタッフ一人一人が“モスの心”を持っていなければそうした評価はいただけません。
もちろん企業ですから効率性や生産性を高めることも重要で、SDGsやコンプライアンス、コーポレートガバナンス等々、企業の責任事項も多々あります。ただ、そこにばかり目が行き過ぎてしまってはいけない。社会的責任の前提としてまず、“モスの心”で記しているような企業文化が根付いているかどうかが重要ですから」(櫻田氏)