1916年、「栄養報国」の創業の精神のもとに創業された明治グループ。それから100年が過ぎ、2020年、社内公募から「健康にアイデアを」が新しいグループスローガンになった。「栄養をもって社会に貢献する」ことに回帰した理由と狙いを、明治ホールディングスの川村和夫社長に聞いた。

存在意義、企業目的としても大事にする「栄養報国」

――御社の存在意義をどう定めていますか。

川村 和夫/明治ホールディングス 代表取締役社長 CEO

1976年明治乳業(現明治)入社。グループ内の事業再編により2011年に誕生した食品事業会社の明治社長に2012年に就任。「ワンチーム・ワンカンパニー」を合言葉に全従業員が同じ目標に向かって一丸となるよう推進。同時に「選択と集中」による構造改革を進め、経営効率の大幅な改善を図り業績向上を実現。2018年に明治ホールディングス代表取締役社長に就任。食品と医薬品を持つグループの強みを生かし、新たな健康価値の創造に向けて挑戦中。1953年生まれ。宮城県石巻市出身。
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座右の銘:「百尺竿頭に一歩を進む」(自分で自分の限界を決めてしまいがちですが、一定の成果に満足せず、常に前を見て進むことを大切にしたいと思っています)
お薦めの書籍:『両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』(チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン著/イノベーションは、進めば進むほど鈍化していくというジレンマがあります。新しい取り組みと従来型の取り組みをバランスよく行っていくべきだという、ある意味当たり前の話なのですが、解決のヒントが書かれているように感じました)

川村和夫氏(以下敬称略) 明治グループの創業当時、事業精神の1つに「栄養報国」がありました。「栄養をもって社会に貢献する」ということですが、当社の100年を超える歴史の中で定着してきた精神で、現在の当社の存在意義や事業目的としても大切にしている言葉です。

――その精神は、今の時代にビジネスをする上でどのような意味を持っていると思いますか。

川村 明治ホールディングスは2009年に、当時の明治製菓と明治乳業が経営統合して生まれた会社です。どちらも明治製糖という会社が起源ですが、砂糖の消費拡大のため、まずお菓子の会社を作り、その後、今でいうM&Aの形で幾つかの会社を傘下に収めてきました。

 その中の1つに極東練乳がありました。当時、練乳は赤ちゃん用の粉ミルクとして使われるなど、栄養食品としても認識されていました。栄養的な価値を提供できる企業を傘下に収めていったことから、創業者である相馬半治が作りたかったのは、今の明治グループのような会社ではないかと。私は第2の創業と表現していますが、100年を超えて、ようやく創業者の思いが結集した会社が出来上がったと感じています。

――第2の創業により、御社の強みがより明確になったと。

川村 そうですね。2009年を機に、どういう事業を中核に据えていくか、会社としての目標をどこに置いていくかという本質に迫る議論が十分に行われ、ポートフォリオの見直しも行いました。その結果、経営統合の取り組みが進み、2011年には食品を扱う「明治」と、医薬品を扱う「Meiji Seika ファルマ」という2つの会社に再編成して新しいスタートを切ることになりました。

 私は2012年から明治の社長に就任しましたが、明治製菓と明治乳業の経営統合により、事業規模としては最初から売上高1兆円という非常に大きなスケールの企業となりました。そのため、新しい時代に適した望ましいポートフォリオをどのように作り上げていくか、選択肢を多く持つことができ、中身の変革にも取り組むことができました。