1916年、「栄養報国」の創業の精神のもとに創業された明治グループ。それから100年が過ぎ、2020年、社内公募から「健康にアイデアを」が新しいグループスローガンになった。「栄養をもって社会に貢献する」ことに回帰した理由と狙いを、明治ホールディングスの川村和夫社長に聞いた。
存在意義、企業目的としても大事にする「栄養報国」
――御社の存在意義をどう定めていますか。
川村和夫氏(以下敬称略) 明治グループの創業当時、事業精神の1つに「栄養報国」がありました。「栄養をもって社会に貢献する」ということですが、当社の100年を超える歴史の中で定着してきた精神で、現在の当社の存在意義や事業目的としても大切にしている言葉です。
――その精神は、今の時代にビジネスをする上でどのような意味を持っていると思いますか。
川村 明治ホールディングスは2009年に、当時の明治製菓と明治乳業が経営統合して生まれた会社です。どちらも明治製糖という会社が起源ですが、砂糖の消費拡大のため、まずお菓子の会社を作り、その後、今でいうM&Aの形で幾つかの会社を傘下に収めてきました。
その中の1つに極東練乳がありました。当時、練乳は赤ちゃん用の粉ミルクとして使われるなど、栄養食品としても認識されていました。栄養的な価値を提供できる企業を傘下に収めていったことから、創業者である相馬半治が作りたかったのは、今の明治グループのような会社ではないかと。私は第2の創業と表現していますが、100年を超えて、ようやく創業者の思いが結集した会社が出来上がったと感じています。
――第2の創業により、御社の強みがより明確になったと。
川村 そうですね。2009年を機に、どういう事業を中核に据えていくか、会社としての目標をどこに置いていくかという本質に迫る議論が十分に行われ、ポートフォリオの見直しも行いました。その結果、経営統合の取り組みが進み、2011年には食品を扱う「明治」と、医薬品を扱う「Meiji Seika ファルマ」という2つの会社に再編成して新しいスタートを切ることになりました。
私は2012年から明治の社長に就任しましたが、明治製菓と明治乳業の経営統合により、事業規模としては最初から売上高1兆円という非常に大きなスケールの企業となりました。そのため、新しい時代に適した望ましいポートフォリオをどのように作り上げていくか、選択肢を多く持つことができ、中身の変革にも取り組むことができました。