さまざまな分野でDXが進み、食品製造業の現場でもDXに対する関心が高まっている。だが、食品工場にはさまざまな課題や問題が山積している。こうした長年の悩みをDXでどう解決するかを紹介するシリーズ。第1回は、コニカミノルタとアンリツが共創した食品工場向けの取り組みを取材した。

人手不足、技術の継承、安全性の確保など食品工場は課題が山積

 食品工場と一口にいっても、製造する食品は多岐にわたり、使用する食材も製造方法もさまざまだ。生産性向上や業務の効率化が叫ばれているが、製造ラインが完全にオートメーション化されている分野もあれば、製造装置や検査装置の導入が進んでも、下処理や仕込み、煮炊き、トッピングや飾り付け、盛り付けなどに手作業が必要なところもある。

 こうした手作業はパート・アルバイトや派遣の従業員が担うことが多いが、募集しても人が集まらないなど人材不足は深刻だ。従業員の高齢化が進んだり、外国人労働者に頼っている工場も少なくない。熟練技術者の技が必要な工程があるケースでは、若い世代への技術の継承も課題となっている。

 企業には、働き方改革や従業員の負荷軽減、安全と健康の確保などが求められるが、火や油を使う行程があったり、床が水でぬれることもある食品工場には危険も潜み、ヒヤリハットを経験した従業員も多いであろう。省人化が進んだ工場では、お互いの見守りが希薄になって、労働災害に気付くのが遅れるケースもある。

 こうした問題に加え、ラインで作業をしている従業員はラインを止めることができないので、途中で持ち場を離れることが難しい。携帯電話の持ち込みも禁止されているため、トイレに行きたい、具合が悪い、あるいは作業工程でトラブルが生じたといった場合、上長や生産管理室との意思疎通がスムースにできないといった問題も生じている。

 現場を管理する正社員には、本来は工場内の従業員の動向や発生する事象をリアルタイムで見守り、異常が生じた場合、状況を迅速に把握して適切に対処し、いち早く復旧することが求められるが、その体制が整っていない工場はまだまだ多いのだ。