先月からスタートした八子知礼の新連載、題して「ものづくりDXを阻む企業に巣くう根深い問題」。前回は「DXを目指す企業が直面する8つの問い」についてそれぞれ述べ、以下の3つの「アクションプラン」を提案させていただいた。
1.ゴールを明確にしよう。~なんのためにDXをするのか?~
2.ビジョンを共有しよう
3.DXについて、ざっくばらんに話せる場をつくろう
いかがだっただろうか? 特に「なんのためにDXをするのか?」は、まずはトップが思い描き、従業員全員で共有する必要がある。しかし、残念ながら、まだまだその目的が浸透されていない企業が多いのが実情だ。
あなたの会社はどうだろうか? 本来であれば、トップが目指すゴールに向かい、全社一丸となって進んでいくのが理想的であるが、トップの意思決定をただ待つのも、時間が非常にもったいない。
そこで、今回から3回に分けて、DXに向けた具体的なフローを紹介していきたい。下図は、そのフローを「DX3つのドア」として表現したものだ。
・第1のドア「可視化のドア」:現場の状態を可視化し、ボトルネックを発見する
・第2のドア「全体最適のドア」:部門・部署を超えて、全社スループットの最適化をする
・第3のドア「新価値創造のドア」:既存の枠を超え、新たな事業で収益化を目指す
今回は、第1のドア「可視化のドア」についてお伝えする。もし、これをお読みになっているのが、現場のリーダーや部署・部門のトップであれば、皆さんだからこそ開けられる「ドア」があることを知っていただきたい。そして、今からでも着手できることがあることも。
なぜ、「可視化」が必要なのか?
経営者から「自社でDXを推進したい」というご依頼を受け、現場にお伺いさせていただくたびに、必ずする質問がある。
「今、一番、困っていることはなんですか?」
すると、
「分かりません」もしくは「特にありません」
という答えが返ってくる。
・・・いやいや、困っていることは(たぶん)山のようにあるでしょう、と、質問を変えてみる。
「生産性を下げている要因があるとしたら、なんだと思いますか?」
すると、周りの人と相談しながら、
「クレームが最近、増えていて」「機械が、ちょこちょこ止まるんですよね」「最近、ベテランが辞めたばっかりで・・・」と品質の問題から、設備、原材料、人員、人材に至るまで、実にさまざまな答えが出てくるのだ。
彼ら彼女らがそう感じる一つ一つは、決して間違いではないだろう。
しかし、「DXで解決したい、会社全体の課題は何なのか?」の答えは、現場の声に耳を傾けているだけでは、なかなか正解にたどり着かない。たどり着かないから、「DXって、結局、どこから始めたらいいんですかね?」と、士気が下がってしまうのだ。
私の答えはこうだ。
「どこから始めたらよいか?を決めるために、まずは可視化(データ化)して、会社のボトルネックを発見しましょう!」と。
ここが、DXのスタートラインだと考えている。