この連載ではものづくり産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)について解説していくが、第1回はものづくりの現場が直面している課題と、その対策について棚卸しをしておきたい。
ものづくりの現場にある3つの課題
製造業の現場は課題だらけである。だが、その状態で高い精度を誇る部品や高い世界シェアを誇る製品を作り続けているのだから、課題が解決されればまだまだ伸び続けられる可能性を秘めている。
そこで、課題の根源はどこにあるのかを明らかにし、解決の道筋を示していきたい。
〔課題1〕古い設備
製造現場の方々は当たり前だと思っているかもしれないが、現場を初めて見るような人にとっては設備が非常に古いことに驚く場合が多い。特に、小規模になればなるほどその傾向は強く、古い設備をよくメンテナンスし、部品や製品を続々と作り出しているのを目の当たりにする。減価償却が終わった後の設備はできるだけ稼働させたいのが経営者の本音であり、丁寧にメンテナンスして使い倒すわけだ。ものづくりの現場において昭和の時代の設備機器が稼働していることは珍しい光景でもなんでもない。
〔課題2〕低い生産性
ところが、そのような古い設備になってくると、さすがに製造中にちょっとしたことで停止することも多くなる。もちろん、新しい設備でもさまざまな要因で“チョコ停”が発生するわけだが、古い設備の場合は、メンテナンスにもそれなりの時間と労力がかかる。結果として生産現場の生産性は定期メンテナンス以外で発生する、このようなチョコ停によって想定しているよりもぐっと低いのが実態だ。
〔課題3〕人材不足と技能継承
さらに近年、深刻なのは人材が採用できないことだ。熟練工がどんどん引退するのに伴い、新卒や中途を採ることはもちろん、外国人の採用も難しくなり始めた。こうなると技能を誰に承継するのかという課題にも突き当たり、今までのような「時間をかければ若手にも継ぎやすい」と考えていた状態から、「誰にも引き継げない」ということが起こり始めている。