JR東日本(東日本旅客鉄道)は、企業の方向性を大転換するビジョンを掲げ、「交通の拠点から暮らしのプラットフォームへ」と提供価値を変える大変革を進めている。同社が目指す「暮らしのプラットフォーム」とはどのようなものか。同社はそれをどのように実現しようとしているのか。

 JR東日本は、2018年に発表したグループ経営ビジョン「変革2027」の中で、「鉄道を起点としたサービス提供」から「ヒトの生活の豊かさを起点とした価値・サービスの創造」への転換という今後の大きな方向性を示している。

 このビジョン実現のために、2021年に「Beyond Stations構想」を発表。DXにより、駅の在り方を変革し、「交通の拠点」という役割を超えた「つながる」場への転換を目指している。

 そのために、駅を起点としたさまざまな新事業を進めており、新しい形態の小売店(OMOモデル)や飲食店の新たな利用方法(「JREパスポート」によるサブスクリプションサービス)へ挑戦するほか、駅を物流の起点やメディアとして活用することを構想。このほかにも、銀行機能を提供するネオバンク、MaaSなどの新事業、Suica 統計情報の定型レポート「駅カルテ」の提供など、駅空間を持つ強みを生かした事業展開を推進し、駅を中心とした新たなまちづくり(不動産開発)にも取り組んでいる。

※:「Suica」の利用者だけが使えるJR東日本のサブスクサービス

 同社のDXの全体像を示したのが下の図だ。

 これらの取り組みを通して、従来の鉄道事業者の経営モデル(小林一三モデル:沿線の不動産開発や流通事業などで乗客を創造)の殻を打ち破り、「暮らしのプラットフォーム」を目指す事業体への変革を目指している。