東急は「City as a Service構想」に沿って、リアルとデジタルを融合させようとする展開を見せている。同社は今後どのような企業になろうとしており、顧客には何を提供しようとしているのか。そのためにどのようなDXを進めているのか。
2021年に社名変更し、まちづくりの会社へ転換
東急は「美しい生活環境の創造」を自らの事業目的として掲げる企業である。2021年に「東急電鉄」から「東急」に社名変更し、鉄道会社からまちづくりの会社への転換という今後の大きな方向性を明示。まちづくりを通じて得られた価値を再投資し永続的循環を図っていく「長期循環型ビジネスモデル」を基盤とした企業を目指している。
同社の長期的な方向性を示すものには、2019年に発表された「TOKYU 2050 VISION」(長期経営構想)がある。ここで2050年時点のあるべき姿として掲げられているのが「City as a Service構想」(リアルとデジタルの融合による次世代に向けたまちづくり)だ。
この構想では、将来のまちづくりの姿として自律分散型の都市構造を想定し、それに人々のライフスタイルを支えるデジタルプラットフォームを組み合わせることで、多様化・複層化するニーズを取り込んでいく。こうした仕組みによって、一人一人の顧客体験に沿ったサービスを提供し、顧客生涯価値(LTV)の最大化を目指すという構想である。
東急の長期的なDXの取り組みは、まだ大きな成果を上げているとは言えないが、その方向性は興味深い。同社が取り組んでいる「リアルとデジタルの融合」を「顧客ごとの視点」と「街の視点」の2つの視点に分け、どのようにLTVの最大化を目指しているかを示したのが下の図だ。
これを見ると、同社が新たなライフスタイルへ対応するためのDXにも積極的に取り組んでいることが分かる。そして、これらの取り組みを通して、LTV向上以外にも循環型社会の追求など社会課題の解決も目指していることも見えてくる。