マミーマート代表取締役社長の岩崎裕文氏(撮影:酒井俊春)

 ヤオコー、ベルク、ロヂャース・・・東京都と接し、都心のベッドタウンとして発展してきた埼玉県では食品スーパー各社が今日もしのぎを削っている。そんな中、近年台頭しているのが「生鮮市場TOP!」や「マミープラス」を運営するマミーマートだ。2023年9月期決算で売上高が前年比9.1%増の約1422億円、営業利益は18.7%増の約58億円(スーパーマーケット事業)を記録するなど、破竹の勢いで成長している。急成長の秘密はどこにあるのか、マミーマート代表取締役社長の岩崎裕文氏に話を聞いた。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年2月21日)※内容は掲載当時のもの

強み異なるマミーマートの2業態

──埼玉県を中心に、東京都や千葉県などで「生鮮市場TOP!」「マミープラス」を相次いで出店し、大当たりしています。それぞれどのような食品スーパーなのでしょうか。

岩崎 裕文/マミーマート代表取締役社長

1998年10月にマミーマート入社。1998年12月に取締役、1999年1月には取締役営業副本部長に就任。その後、2001年4月に取締役総合企画室長、2002年4月の常務取締役経営企画室長の就任を経たのち、2002年10月に常務取締役管理本部長に就任。2003年10月に常務取締役営業本部長、2006年10月に常務取締役業務統括本部長、2006年12月に就任した代表取締役副社長 兼 業務統括本部長を経て、2008年12月より代表取締役社長に就任。

岩崎裕文氏(以下敬称略) 「生鮮市場TOP!」は「ハレの日」向け、「マミープラス」が「ケの日」(日常)向けの食品スーパーと捉えるのが分かりやすいと思います。いずれの店も、徹底して他店との差別化にこだわっています。

 生鮮市場TOP!は「食べること/料理が好きな人」をターゲットとした広域商圏型の業態です。1店舗あたりのアイテム数は約1万とそれほど多くありませんが、約99%の商品が食品と、とにかく食にこだわっています。

 生鮮市場TOP!店舗はEDLP(Everyday Low Price:毎日商品を低価格で販売する方針、特売やチラシ販売を極力行わない)で運営することに加え、青果・精肉・鮮魚の生鮮三品は1商品あたりのボリュームを大きくし、お得感を演出しています。

 また、「青バナナ」や「むかご」など他店ではなかなか見つからないような商品も販売し、「食/料理好き」を呼び込んでいます。こうした商品政策を打つことで“近所からスーパーを2、3軒先飛び越してでも「生鮮市場TOP!」に足を運びたい”というニーズを獲得できているのです。実際、商圏は半径2〜3キロと通常の食品スーパーよりも広くなっています。

「マミープラス」は生鮮市場TOP!とは異なり、半径500m以内を主な商圏に据えたディープディスカウントストアです。「他店よりも1円でも安く」をモットーに、加工食品を安売り販売しています。これが可能になっているのは、アウトパック商品(店舗外でつくられた商品)を中心に販売し、コストがかからない店舗運営を実現できているからです。

 当然ですが、消費者は安売りが大好きです。ただ価格の「割安感」はあくまで相対的なもので「他店よりも〇〇円安く買えた」という体験こそが(安いという)価値の本質だと思います。実際、マミープラスでは1週間に1回来店する人が「商圏内の他店よりも安い」、と牛乳を3〜4本まとめ買いする、という買い方をしています。

──生鮮市場TOP!では、子会社の「彩裕フーズ」が開発するオリジナル惣菜商品も人気です。全国スーパーマーケット協会が主催する「お弁当・お惣菜大賞」では11年連続で受賞商品を輩出しました。