かつて小売・流通業は内需型産業だと言われていた。けれども今は、食品スーパーやコンビニなどには積極的に海外展開している企業もある。各社はどのような戦略で海外展開に取り組んでいるのか。そしてこれからはどのようなことが課題になるのだろうか。
流通業界の専門誌、月刊『激流』編集長の加藤大樹氏に聞いた。
<連載ラインアップ>
■第1回 「一気にドラッグストア大再編が進む可能性も」月刊『激流』編集長に聞く小売業界の注目動向
■第2回 総合スーパーの再編は最終ステージに突入? 月刊『激流』編集長に聞くGMS再編・改革の最前線
■第3回 セブン、ファミマ、ローソン…月刊『激流』編集長に聞くコンビニ業界「成長持続」のための打ち手
■第4回 オーケー、ロピア、トライアル…注目はディスカウント系の動き、月刊『激流』編集長に聞く食品スーパーの生き残り策
■第5回 三菱食品の脱・売上至上主義、日本アクセスの「情報卸」強化…月刊『激流』編集長に聞く食品卸の収益力改善戦略
■第6回 マツキヨ、イオン、セブン-イレブン…小売業は「内需型」をどう克服? 月刊『激流』編集長に聞く各社の海外戦略(本稿)
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ツルハ・ウエルシア連合、マツキヨ、スギが積極的に海外展開
――ドラッグストア業界では、海外展開に積極的な企業は少なかったようですが、それはなぜでしょうか。
加藤大樹氏(以下敬称略) これはあくまでも私見ですが、これまでは国内市場がまだ伸びる余地があったからでしょう。国内だけでも十分ビジネスしていけるのに、わざわざリスクを取って海外に出る必要はないと考えていたとしても不思議ではありません。ウエルシアが中国に進出し、うまくいかなかったということも各社の心理に影響していたかもしれません。
今、ドラッグストアの国内市場は9兆円規模になっています。しかし、少子高齢化もありますし、国内市場がこれからさらに大きく伸びることは考えにくいでしょう。建築コストが高くなったことや人手不足もあり、各社の出店ペースはやや鈍化しています。
一方で寡占化も進んでいて、経営統合することを発表しているツルハとウエルシアの売上高を単純に足すと約2兆円になります。これから他社のシェアを奪うとしても、それが4兆円、5兆円規模に膨らむことは期待しにくい。そうであれば成長の余地を海外に求める企業が出てくるのはある意味当然のことです。
それでも海外展開に積極的なのは、ツルハ・ウエルシア連合、マツキヨココカラ&カンパニー、スギホールディングス(HD)などの大手上位クラスに限られます。
進出先はアジアが基本で、マツキヨは香港を含む中国、台湾、タイ、ベトナム、それからグアムとかなり広範囲に展開していて、海外店舗は70店くらいになっています。やや異色なのはスギHDで2020年に台湾の薬局チェーンと業務提携し、自前で店を出すのではなくパートナー企業に商品供給するという独自の戦略を取っています。
マレーシアで薬局やクリニックを展開するアルプロ・ファーマシー(ALPRO PHARMACY)とも2023年に合弁会社を設立し、「アルプロ・スギ・ファーマシー」を展開し始めています。医薬品は大衆薬も含めて国により規制が違うため扱いにくい面があり、各社が海外で展開する店はヘルス&ビューティーが中心になっていると考えられます。
また、マツキヨにしても国内で展開している店舗数に比較すれば海外の店舗数はごくわずかで、各社ともまだテスト段階と言えるのではないでしょうか。